オイストラフ弦楽四重奏団(David Oistrakh Quartet)が来日しています。
アンドレイ・バラーノフ:第1ヴァイオリン
ロディオン・ペトロフ:第2ヴァイオリン
フェドル・ベルーギン:ヴィオラ
アレクセイ・ジーリン:チェロ
曲目は
ショスタコーヴィチ 弦楽四重奏曲 第4番
加藤昌則 ”There is…,There was… ~Drawing note of the memory for String Quartet”
ハイドン 弦楽四重奏曲第30番「冗談」
ボロディン 弦楽四重奏曲第2番
オイストラフを聴くのは今回で2度目です。
大御所のオイストラフ家から名前の使用を託された若き四人組です。
アンドレイが少しスリムになって、アレクセイがふっくらしたかなといったところからスタートです。
ショスタコーヴィチ第4番。
これまでショスタコーヴィチの弦楽四重奏曲はあまり聴いていない耳で臨みました。
ショスタコーヴィチはスターリンの独裁政治の元でスターリンに気に入られなかったら粛清も目前という環境で作曲していたということですが、この曲はまさにその追い込まれた叫びが爆裂したような音の構成に聴こえました。
ギーギー、ギコギコと習い始めの子どもの練習を聴いているような耳障りな音。それを四つのパートそれぞれが思いっきり強烈に弾くので、不協和音が奥の虫歯に響く響く。
演奏が云々以前に曲が難しく正直苦行でございました。
解説書には「全体的に静かめで、かつ極端な感情の揺れがみられない作品」とありました。これがそうなら、他の曲はもっとすごいのか・・・。
“There is…,There was… ~Drawing note of the memory for String Quartet”。
加藤昌則さんは若い作曲家の方で会場に見えていました。
オイストラフ四重奏団に向けて書かれた曲のようで、「日本の城や寺にはかつての殺戮や情事などの様々な記憶が柱や壁、空間にあるはずで、それを表現した」そうです。
まさに、殺戮のご様子。
1曲目と似たような前衛的な曲で、こちらも聴き入る余裕なしというところでございました。
ただ、四人の演奏は迫力に溢れ弦楽器とはこんなに男らしい楽器なのか、と発見でした。
休憩をはさんで
ハイドン。ああ~、これこれ。弦楽四重奏のふんわりとしたハーモニーを堪能です。
ただ、思いすごしか四人がおもしろくなさそうに淡々と演奏されていました。
もう何万回も弾いたぜよという感じでしょうか。
こちらは慣れていないのでわくわくですが、演者にとっては飽き飽きというまあこれもしかたのないミスマッチかと思われます。
それでも第1ヴァイオリンのアンドレイが徐々にピッチを上げてきます、弦楽四重奏は主に第1ヴァイオリンがリーダーですが、アンドレイが弓の毛をビロビロ切りながらぐいぐい引っ張るイメージはドラえもんの”ジャイアン”のようです。
特に第2ヴァイオリンのロディオンは必至に合わせにいく感じです。
漫才でいったら島田紳助と松本竜介のような。
「冗談」は、終わり方が「冗談」みたいなのでこう呼ばれているそうです。
「終わったのかな?」「終わる?」「のかな?」、「かな?かな??」という箇所の演奏を見るのは初めてで、四人が顔を見合って息を合わせているのがとっても楽しかったです。
最後はボロディンです。
これも、四重奏の心地よい響きながらの、強く艶のある音で素晴らしいです。
2楽章の途中、テープレコーダーのテープが伸びたような?変な音がしたと思ったら、演奏が途切れました。
第2ヴァイオリン・ロディオンの弦が切れたのでした。
すかさず、アンドレイが内ポケットからスペアの弦を出してロディオンに渡しました。
アンドレイ、なんて優しいのでしょうか。
全然ジャイアンではありません。
ただ、さすがにその場でチェンジは無理だよねという雰囲気で「ストップ」と言い残し四人で一度袖に戻りました。
弦調整を終え、2楽章初めから再開。
貴重な場面が見られて、2楽章が2回聴けて、得した気分でした。
アンコールはバルトークのルーマニア民俗舞曲とチャイコフスキーの「甘い夢」でした。ルーマニア民族舞曲は圧巻。
オイストラフはがんがん弓の毛を切って、弦を切って弾きまくって欲しいと思いました。
今日の1楽章は、ハイドンの「冗談」最後のところです。