クリスティアン・ティーレマン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、シューマン「ライン」、ブラームス交響曲4番 に行ってきた。
曲目は
シューマン:交響曲第3番「ライン」
ブラームス:交響曲第4番
シューマン:交響曲第3番「ライン」
この曲はいきなりさびなので、全神経集中だ。
「うわっ、今日来てよかったー」と2秒後になった。
弦の微妙な周波数の揺れが柔らかい膨らみとなって届いてくるようなきれいな響きに活力が加わって、祝祭的な颯爽感でいっぱいだ。
コントラバスの深くふくよかな底流にヴァイオリン、ヴィオラがクリーミーに乗ってくる響きに脳がくらくらする。
ティンパニが燃料を注ぎ込み、ホルンは「ここはスイスアルプスか!?」というくらい伸び伸びと迷いない景気のよい響きで主役をはっている。
ティーレマンの指揮は見ていてわかりやすい。
ここは第1ヴァイオリンは小さく小さくなんだなとか、急ぐんだな、強くアクセントだなと。そしてその通りの演奏になる。
“弱に弱に”からの”強へ”は加速度をつけながらふわっとつながりとてもエキサイティングだ。
一音一音に指定があって、テンポは前のめりくらいな感じで統一され、新鮮なプチ・サプライズの連続だ。
4楽章は深刻な調子の曲でもう一つなじめなかったが、ティーレマンの捌きは力強く、のめりこんで聴いた。
春がきたような5楽章、またホルンがかっこよい、金管が息吹を注ぐ、トランペットは張りの効いた輝く音、盛り上がったー。
なんて楽しいシューマンなんだ。
ブラームス:交響曲第4番
1楽章 入り。ん?こうなのかな?というばらばらとした感じがして不安がよぎったが、すぐに消し飛んだ。
テンポよく、厚い弦が滑らかに呼吸しホルンが唸り、木管が清廉にスパイスを効かせる。
タメからの解放、寄せては引き引いては寄せる波のような表情付けのメリハリが効いていてわかりやすい。
最後の盛り上がりは狂気的でさえあった。
ブラ4がこんなに恐ろしい曲だったとはと思った。
4楽章 今日のフルーティストはカール=ハインツ・シュッツさん。
これまで差し色ならぬ差し音に徹していたシュッツさんの出番。待っていましたよ。
金の音がまっすぐに輝いてホールに響く。
ティーレマンがシュッツだけにタクトを振って細かく表情付けしていてシュッツもそれに応え音色がさらに豊かになっていき、The シュッツ timeであった。
聴きごたえ抜群でした。
オーケストラを、ある時はひよこの羽毛のようにふんわりと、そしてまたある時は天空を駆け巡るドラゴンのように力強く勢いよく変化させ続けるティーレマンの指揮は繊細かつ豪胆でエネルギッシュ。
カーテンコールの時には指揮台に「ダンッ」と両足で飛び乗る茶目っ気も持ち合わせ、もう会場も「キャー」である。
今後はティーレマン大王とよばせていただく。
にしてもウィーンフィルのコントラバスは夢心地サウンドでございました。
アンコール。なんと!!
「美しく青きドナウ」をやってくれた。
本物の本物だーーーーーー。
まじか。
これが聴けるのか。
小さな小さなヴァイオリンの「シャリシャリシャリ」は本当に気付かないうちに始まる。
そして、ヤネツィックさんのホルン。しびれる。
指揮はティーレマン。
「ズチャッチャ ズチャッチャ」は活き活きと全体を上げて、ティーレマンもここでもタメ、緩急を入れて楽しい。
贅沢で濃密な夢時間であった。
※写真はチラシより
2025年11月12日 サントリーホール
