N響演奏会、小菅優さんが共演しました。
指揮はアレクサンダー・リープライヒさん。
そして。会場に行ってから知ったのですが、
コンサートマスターはライナー・キュッヒルさん。元ウィーンフィルハーモニーの元コンサートマスターです。
曲目は
モーツアルト作曲:『フィガロの結婚』序曲
ベートーベン作曲:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
モーツアルト作曲:交響曲第41番「ジュピター」
キュッヒルさんの手慣らし
生キュッヒルさんを拝見したのは初めてで、こちらも見どころでした。
着席してから演奏までの少しの間に、各自少し慣らしで音を出しますが、キュッヒルさんは念入りに1フレーズを繰り返していらっしゃりその様子に引き付けられました。
決して大きなボリュームではないのですが、高く細かい音が直に届いてきました。
これがキュッヒルさんの音なのか、と。まずは小さく感動しました。
『フィガロの結婚』序曲
小さく小刻みなヴァイオリンから景気よく開幕。
晴天の休日にピッタリです。
あまり抑揚はつけすぎない味付けでした。
小菅優さんの優しくもエモーショナルな演奏
小菅優
ピアノ協奏曲第5番「皇帝」は冒頭からピアノがオーケストラと合わさるちょっと特異な曲で「最初から緊張もするけれど頭から一緒に音楽を作っていくのはうれしい」ということです。
コンサート開始前に、プレトークが設けられていて、なんと指揮者のアクレサンダーさんと小菅さんが登場され曲について話されたのです。
“これから本番”という時に主役登場でびっくり、大変ありがたいサービスでした。
ピアノという楽器は、メーカーが同じだとしてもタッチや音色がそれぞれ違うし、またホールによっても響きを合わせていく必要がある、というピアニストの大前提についてもお話くださり、演奏というのは”上手に弾く”以外にいろいろ技術があるのだなということがよくわかりました。
さて、演奏です。
小菅さんの演奏は、ヴァイオリニストの樫本大進さんとのデュオ以来2回目でした。
1対1の時とはまたモードが違い、迫力がありました。
ふわっと柔らかい音色は共通ながら、強い芯の入った響きを感じました。
ボリュームも自在、キラキラと輝く高音から奥行きのある低音までみごとにオーケストラをリードしていました。
1楽章冒頭のカデンツァはたっぷりで、いいぞーーっという感じで、もう拍手したいくらい。
(↑演奏 ピアノ:アルフレッド・ブレンデル、指揮:ズビン・メータ、 ウィーン交響楽団 1961年録音。)
2楽章についてトークで「この曲は堂々とした曲ではあるが精神的側面があり特には巡礼のような場面ととらえている」といったように話されていました。
その用意で聴き入ってみると、なるほど祈りというか敬虔さというか胸に迫るものがきました。
2楽章終わりから3楽章への入りは超絶かっこよいところです。
祈りから爆発。もう何回もさびを聞いていたい、最高でした。
(↑演奏 ピアノ:アルフレッド・ブレンデル、指揮:ズビン・メータ、 ウィーン交響楽団 1961年録音。)
アンコールも1曲弾いてくれました。
モーツァルト作曲:ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 KV 330より第2楽章
ゆったりした曲で、小菅さんの1音1音が真綿に包まれているような世界をたっぷりと味わえました。
アレクサンダーさんの赤い裏地
アレクサンダー・リープライヒ
アレクサンダーさんは1968年ドイツ生まれ長身のイケメンです。
長い手足を強い体幹で存分に活かしダンサーのような大きな動きで指揮されます。
ヴァイオリン、管楽器、低音部隊へと腰をかがめ、大きく前に踏み出し、体を回転させ、抑揚・アクセントなど細かくはっきりと指示をだされていました。
アレクサンダーさんは、ロング丈のジャケットを着用されていて、後ろスリットから光沢のある真っ赤な裏地が見え隠れし、とてもおしゃれでした。
「ジュピター」が始まりその裏地に目がいきながら、キュッヒルさんの「キュッヒル キュッヒル」という音色に耳を凝らしていたところ、3楽章あたりからは指揮にオーケストラが”がしっ”とはまり一体化したような音の充満を感じました。
オーボエがよい音でした。
そのままフィナーレへ上り詰め、ヴァイオリンの速弾きも気持ちよかった。
マラソン完走後のようなやりきった感をかもしだしながらも、アンコールも演奏してくれました。
グリーグ作曲:「ペール・ギュント」組曲第1番 作品46から「オーセの死」
アレクサンダーさん、とっても観客思いの心温かい方でした。
メジャー曲は楽しいな。
(2022年10月2日 埼玉会館)
※写真は埼玉会館ウェブサイトより。