アンドリス・ネルソンス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ショスタコーヴチ9番、ドヴォルザーク7番

アンドリス・ネルソンス指揮|ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団|ショスタコーヴチ9番、ドヴォルザーク7番 に行ってきた。

曲目は
ムソルグスキー(ショスタコーヴィチ 編曲):オペラ『ホヴァンシチナ』第1幕への前奏曲「モスクワ河の夜明け」
ショスタコーヴィチ:交響曲第9番
ドヴォルザーク:交響曲第7番

オペラ『ホヴァンシチナ』第1幕への前奏曲「モスクワ河の夜明け」

小刻み小刻みの弦で、ああ、ついに始まったのだなという思いがわいてきた。
打楽器の鐘と銅鑼がロシアの世界につれていってくれますます雰囲気が盛り上がる。ロシアへの準備は万端だ。

ショスタコーヴィチ交響曲第9番

ショスタコーヴィチの”道化の皮をかぶった狂気”の曲だ。
1楽章はアップなリズムと賑やかなブンチャカブンチャカで楽しげで、ピッコロが超絶品、脳髄を差し込んでくるように鋭い。
トロンボーンはバリッバリッで会場の空気を割ってくる。
ピッコロ、トロンボーンが全体を形作っているのだな。
トランペットもよい音だ~。銀の音色で狂気の予感を奏でているような。

コンサーとマスターはフォルクハルト・シュトイデさん。
ヴァイオリンソロは明るいのだけれど不安感迫る張り詰めた音、それでいて上品だ。

4楽章のファゴットソロはソフィー・デルヴォーさん。ベルリン・フィルでも首席を務めていた女性だ。すごい。
まろやかで愛嬌のある音でとってもきれい。反面不気味さはちょっとなかったように思う。
ファゴットと一緒に注目したかったのは、ビオラ。
ファゴットに合わせた、弱い弱い弱い出ているのだかいないのだかの音はいったいどうなっているのだろうと不思議であった。やはり見てもわからないほどに微妙な奏法で、それを全員がひとつもズレずに奏でられていて、これは隠れ名人芸だなととても印象に残った。

ドヴォルザーク交響曲第7番

1楽章:弦を楽しみにした。ふわっと包み込んでくれるウィーンフィルサウンドに浸るために今日、ここに来た。なのだが、うわぁっというところは一度あったが、あとは単調に感じた。
2楽章:冒頭クラリネットの後の信じられないくらい美しい弦の響き。これを世界最高峰の弦で聴けた。いい。ふわーーーっと無重力空間に置かれた瞬間が訪れた。
3楽章:「ドヴォルザークはなぜこのような素敵なメロディーを生むの?」のベスト3に入る、おなじみのメロディーが冒頭。
素敵だ。ヴァイオリンが踊りコントラバスがたっぷりと赤ワインを注ぐように各パートの融合をまろやかにしている。
そして4楽章、聴きどころメロディー満載で盛り上がっていく章だ。
並外れたキレ、ボリューム、厚み、煌めきが膨張して襲ってきてしびれるーーー。

全体、ロナルド・ヤネシッツさんの締まったホルンソロがやっぱりよい音だったり、席でリラックスしているカール=ハインツ・シュッツさんがフルート・ソロになるといきなり最大出力の遊ぶような明るさで会場を満たしてくれたり、ティンパニは多様なリズムを滑らかに奏でられていて生きているようだったり。
個人技を堪能することができた。
さびの部分とソロは抜群に染み入ってきたが、弱く繊細なカ所のサプライズはあまりなかったように聴いた。

ネルソンスさんは不調を押してのご登板のようだったが、ネルソンス・ウィーン・フィルは、細密にこだわりすぎず個性を際立たせて開放させるスタイルなのかなと思った。

アンコールは2曲演奏してくれた。
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『我が人生は愛と喜び』
J.シュトラウスⅡ世:『トリッチ・トラッチ・ポルカ』

ネルソンスさんは(自分が行くコンサートが終わったからというわけではありませんが)ゆっくりお休みいただきたいです。


ドヴォルザーク交響曲第7番2楽章 クラリネットの後の信じられないくらい美しいメロディーのところ。

play_circle_filled
pause_circle_filled
  
volume_down
volume_up
volume_off

演奏:ラファエル・クーベリック指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1956年10月1日~4日録音

ドヴォルザーク交響曲第7番3楽章 おなじみの冒頭。

play_circle_filled
pause_circle_filled
  
volume_down
volume_up
volume_off

演奏:ラファエル・クーベリック指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1956年10月1日~4日録音


2024年11月16日 サントリーホール

関連記事

  1. 樫本大進&エリック・ル・サージュ ヴァイオリンソナタ

  2. ウィーン チェロ・アンサンブル 5+1

  3. ベルリンフィル・ハーモニー管弦楽団 『英雄の生涯』

  4. トリエステ・ヴェルディ歌劇場の「椿姫」

  5. ベルリン・フィルハーモニック・ウィンズ

  6. ロシア国立交響楽団[シンフォニック・カペレ]2019

  1. ベートーベンの弦楽四重奏曲の「ラズモフスキー」の意味

  2. ベートーベン交響曲第1番のパトロンは

  3. モーツアルト死の謎。わかっていること。いないこと。

  4. モーツアルトのオペラ。「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「…

  5. ベートーベン「不滅の恋人への手紙」。不滅の恋人は誰か。

  6. ベートーベン 「ハイリゲンシュタットの遺書」

  7. マーラー交響曲第1番『巨人』。『巨人』とつけた理由は?

  8. 【新説!】ベートーベン交響曲第3番「ボナパルト」から「英雄」に変…

  9. チャイコフスキーの死因

  10. ベートーベン交響曲第3番『英雄』表紙。「ボナパルト」が消された!

  1. チャイコフスキー交響曲第2番『小ロシア』改め交響曲第2番『ウクラ…

  2. モーツアルト、ベートーベンをビッグにした「ハプスブルク帝国」と…

  3. 神聖ローマ帝国の貴族がベートーベンをつくった

  4. モーツアルトの生まれたザルツブルクは「ザルツブルク市街の歴史地…

  5. ベートーベン作品とパトロン一覧【カテゴリー別、パトロン別に見ら…

  6. ムソルグスキー作曲『展覧会の絵』の「キエフの大門」はウクライナ…

  7. ナポレオン 戦争とベートーベン交響曲年表

  8. 「フィンランディア」ロシアからの独立への決意の曲

  9. チャイコフスキー交響曲1番 「冬の日の幻想」さび

  10. ウィーンが「音楽の都」の理由。それはハプスブルク帝国の首都にあ…