ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団

ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団に行ってきた。

曲目は
スメタナ 『売られた花嫁』序曲
〃   『わが祖国』より「モルダウ」
リスト ピアノ協奏曲第1番
ドヴォルザーク 交響曲第8番

ヤナーチェク・フィルハーモニー管弦楽団

ヤナーチェク・フィルはチェコのオーケストラ。
1954年にオストラヴァ交響楽団として設立された。

ヤナーチェクはチェコ出身の作曲家。
ヤナーチェク・フィルの本拠地オストラヴァがヤナーチェクの終焉の地ということで1971年に改称した。

チェコといえば、3月に開催されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の1次ラウンドで日本と対戦し、チェコ選手にデッドボールを与えた佐々木朗希投手がお菓子をもっておわびにいったり、大谷翔平選手が移動の際チェコの帽子を着用していたなど「侍ジャパン」との心温まる交流が話題となり、一気に親密感が高まった国だ。

チェコチームは野球が本業でない選手が代表としてプレーしていることにも注目が集まったが、まさかミュージシャンが野球はないだろうと思いながらも、爽やかな印象をもちながら臨んだ。

興奮の『売られた花嫁』序曲

『売られた花嫁』という人道的にいかがなものかのタイトルはさておき、たいへん楽しい曲だ。

映画『男はつらいよ』のテーマ曲を彷彿とさせる威勢のよい出だし。
そしてこまかな弦のすばしっこい動きにワクワク感があふれ出す。
第2ヴァイオリンの献身的な微量かつ超高速で正確なリズムの刻みが曲全体の勢いを支えている。

指揮者はレオシュ・スワロフスキー。
指揮者レオシュ・スワロフスキー
「陽」の雰囲気を体じゅうから発しながら、演じるようにタクトを振られてとても楽しい。
オーケストラは大編成で60~70人くらいはいらしたと思う。
この人数がスワロフスキーの合図で強弱自由自在に繰り出すスケール感は大編成の醍醐味だ。
仕込まれているちょっとしたアクセントもアクセサリー的でキュート。
なんてよい曲なのだろう。
10分程度の曲だが、最初から大興奮だった。

『わが祖国』より「モルダウ」

『売られた花嫁』も『わが祖国』もスメタナ作曲、どちらもメロディーが心を打ってくる。
「モルダウ」は、よく知っている”あの”部分さえ聴ければ、と気楽な態度でいたが、とんでもない。
最初のフルートが不思議な響きで”川感”を出している。
ふるふると湧いて流れているような感じがほんとにするのだ。

そしてそして。
チェロが最高にかっこいい。
底流を安定的に流れている。
“例のメロディー”には当然引き付けられるのだが、メロディーが水面としたらこのチェロの川底の知られざるうねり的な響きがあってこそということがよくわかった。

大嵐の場面(?) では豊潤なコントラバスも加わり劇的な演奏だった。

モルダウはドイツ語で、チェコ語ではヴルタヴァというそうだ。
チェコは旧ハプスブルク帝国領のオーストリア=ハンガリー帝国だったのでドイツ語が使われていて、タイトルとしてはモルダウが有名。

リスト ピアノ協奏曲第1番

ピアニストが変更になった。
五十嵐薫子さん。

この曲は、重い迫力と信じられないほどの速弾きが聴きどころだ。
こんなに難しい曲を、ピンチヒッターで楽譜も見ないで弾き倒すとは天才か、と思う。
ピアニストはすごい。

なめらかに鍵盤を滑りわたる音色はとてもきれい。
重い迫力のところは音がとがりすぎていたように感じ、ゆったりとした部分は少しためすぎかなと思った。
最後、ブルドーザー的なフィニッシュはバシッと決まってよかった。

ピアノは一心に駆け抜ける。
オーケストラは無難なペースで進めていく。
つまり、ソリストとオーケストラの融合はもう一つだったと思う。
だが、ピンチヒッター演奏というサプライズも演奏会ならではの体験でおもしろかった。

ドヴォルザーク 交響曲8番

8番は全楽章が1曲というくらい聴きどころ満載だ。

1楽章。最初はフルートの独奏、ロングトーンからの盛り上げが聴きたかった。フルートはどこまでどうやって伸びているのだろうと耳を凝らしたが、種も仕掛けもなく長く長く響いていた。

2楽章が好きだ。弦をたっぷり聴けるから。
豊潤コントラバスが肋骨に響いてくる。

3楽章。ドヴォルザークはなぜか泣きたくなる。
8番で泣くならここ。
郷愁にあふれ、色気のあるメロディーが攻めてくる。

4楽章。ここはブラス!
なんといってもラストの盛り上がりからのキメがMAX聴きどころ。

指揮者スワロフスキーさんはロックンロールのギタリストの決めポーズ的に飛び上がって横向きに着地。
ビシッと決まって最高です。

全員が「やったった!」というやりきった感が聴きどころでもあり見どころでもある。

最後の最後、ホルンがもっと荒々しく暴れてくれてもよかったかなと思った。

アンコールはこの部分を再演してくれた。贅沢であった。

チェコ由来のスメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェク・フィルそしてハンガリー由来のリストと旧ハプスブルク帝国三昧、全部よかった。

今日は2曲

『売られた花嫁』

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全曲
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ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1963年1月4日~5日録音

ドヴォルザーク交響曲第8番

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4楽章ラスト
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ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1961年9月29日録音

(2023年4月29日 武蔵野市民文化会館)

写真はアイキャッチは武蔵野市民文化会館ウェブサイトより、スワロフスキー、五十嵐薫子は茅ヶ崎公演チラシより。

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