マーラー交響曲第1番『巨人』。『巨人』とつけた理由は?

マーラーの時代

さて、マーラーの交響曲第1番です。
マーラーは比較的最近寄りの作曲家です。
最近寄りといっても、1860年生まれです。
ベートーベンが1770年生まれなのに比べてということです。
ベートーベンから約100年後の作曲家です。

1860年は日本では桜田門外の変が起こった年です。
交響曲第1番が仕上がったのが1888年で、これは大日本帝国憲法発布の1年前、そんな頃です。

東の横綱ベートーベン第6番、西の横綱マーラー第1番

マーラーの交響曲については、二種類の人間がいるように思います。
大好きな人とそうでない人です。

マーラーの交響曲は全体的におおがかりで仰々しく、楽器それぞれの聞かせどころが必ずあって響きに引き込まれ、盛り上がるか、と思うとそうでもなく、なんともつかみどころがないというか”サビ”をとりにくいのです。

なのですが、この1番は異彩を放っています。
この曲に限っては二種類に分かれることがないのではないかと思う聞きやすさです。

第1番は「巨人」というタイトルがつけられていますが、まったく合っていないと感じます。
イメージでいうと、ベートーベンの第6番「田園」ぽい、軽やかで楽しげなメロディー満載で、森の中をキラキラと散歩している情景といった様子です。
自然との情景がうかぶ曲の東の横綱がベートーベン第6番「田園」とすると西の横綱がマーラー第1番「巨人」といってもよいのではと思います。

しかも1楽章の”キラキラ散歩”に加え、2楽章はまた別のタイプの”ルンルン”メロディーが展開されます。

1曲で二度おいしいマーラーを紹介します。

ちなみに「巨人」はマーラー本人が好みの作家ドイツ・ロマン派の作家ジャン・パウルの長編小説「巨人」から名付けたということです。
ただ、マーラー本人は後に「巨人」のタイトルを削除したということです。

play_circle_filled
pause_circle_filled
マーラー交響曲第1番『巨人』1楽章さび
volume_down
volume_up
volume_off

ちなみに3楽章は、幼児の遊び歌「グー・チョキ・パーで、なにつくろ」の暗い版というのが話題になる曲です。

遊び歌「グー・チョキ・パーで、なにつくろ」

play_circle_filled
pause_circle_filled
マーラー交響曲第1番『巨人』3楽章 暗い「グー・チョキ・パー」
volume_down
volume_up
volume_off

関連記事

  1. ベートーベンが聴こえなくなったのは何歳?

  2. ベートーベンのパトロン 時代による変遷

  3. モーツアルト交響曲第31,36,38番。地名シリーズ

  4. チャイコフスキーの肉声。初の蓄音機に大興奮

  5. モーツアルト、ベートーベン、チャイコフスキー、一番長生きなのは誰?

  6. ヤニック・ネゼ=セガン指揮 METオーケストラ 来日2024 マーラー5番