クラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団、クープランの墓、マ・メール・ロワ、展覧会の絵。
昨晩に引き続きまた来てしまった。
曲がよすぎるのです。
曲目は
ラヴェル:クープランの墓
ラヴェル:マ・メール・ロワ
ムソルグスキー(ラヴェル編):展覧会の絵
クープランの墓
なんといっても冒頭のオーボエに全集中。
いい。
流れるようなメロディーが湧いて出て一気に世界が作られた。
クラリネットが絡みつき、合わさっていく弦軍団がまた美しい。
柔らかく細かく聴こえてきて夢心地だ。
各パートが拡散されてふんわり感にあふれている。
昨日の雰囲気とは一味も二味も違う、隙のない有機体の音だ。
フルートが入ってきて、なんてキラキラなのだろう。
舞台上に金粉が振り撒かれたようだ。
ああ、今日もまた脳が洗われる。
昨日アンコールで演奏してくれた最後の第4曲「リゴードン」も来たっっ。
すばしっこ感とワクワクがもう好きにならずにいられない。
マ・メール・ロワ
おとぎ話の世界。
マケラ&パリ管のためにあるような曲ではありませんか。
特に聴きたかったというより目で見たかったのが「おやゆび小僧」の鳥の鳴き声だ。
ヴァイオリンソロが「キュッキュッ」と鳴くところ。
音量小さくもホールにとおる、若めなかわいいさえずりで最高。
驚いたのが、ソロの横の方も実は末尾に瞬間アクセントを加えているのがわかった。
ここのところは後でCDでよく聴いてみようと思う。すごい。
「パゴダの女王レドロネット」は中華風の曲で銅鑼なども鳴るのだが、音は完全にフランスの輝きだ。
フランス人の作った中華料理といったところか。
「美女と野獣」の聴かせどころの一つに野獣のコントラバスーンがある。
担当されていたのは女性で体格もそう大きくない方であったが、これがボリュームがあり怖いのだがちょっと温かいような雰囲気のあるとてもよい音だった。
最後「妖精の国」。
最後は目をつぶって楽園に浸りきった。
繊細からのティンパニへの思い切りのメリハリが激しくとても気持ちがよかった。
ハープがもっと押し出しよくてもよかったかなと思った。
クープランの墓にしてもマ・メール・ロワにしても今回の大注目はオーボエだ。
太めで揺れない余裕のある音でイングリッシュホルンやクラリネットとのやりとりもとてもスムーズ。
マケラを見ようとオペラグラスを持参したがオーボエの方に釘付けとなってしまった。
外見は映画に出てきそうなかっこいいスキンヘッドのフランス人といったご様子なのだが、聴いているうちにオーボエの精に見えてきた。
展覧会の絵
なによりも楽しみにしたトランペットの第1音。
しかし。うかつにも微妙に聴き逃してしまった。
マケラは「ご自分のタイミングでどうぞ」的に明確な合図をされなかったので、気を抜いており「うゎ、始まった」という感じ。
その第1音は。ちょっと、ずっこけた。そして急ぎ気味。
たっぷりがよかったかな。
だが、トランペットの聴かせ場第6曲「サムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ」のソロはバッッチリで最高であった。
第5曲「卵の殻をつけた雛のバレエ」は前のめりに飛び散らかる感じが、速いのだが木管と弦のピチカートがとても丁寧に軽やかに組み合わされていて大変に楽しかった。
第9曲「鶏の足の上に立つ小屋」。
最後から2番目の山場。
もう最高である。
ティンパニとコントラバスがまず力強くキレキレ。
そして乗ってくるトランペットからの金管軍団、スピード感ボリューム感で気分は最高潮である。
あの”自由な”方々が一度揃うとなんという爆発力を出されるのだろう。
第10曲「キエフの門」。ついに来てしまった、最後か、終わって欲しくない。
トランペットがハード高らかに響きわたり、トロンボーンはバリバリだ。
鐘も聴けた。
巨人の演奏であった。
ムソルグスキーがいてラヴェルがいて、マケラがいてパリ管がいて、これは現実か!?人生最高の幸せの時間の一つとなった。
パリ管の方々は昨日もそうであったが、なんとなくリラックスされている。
最初舞台に入ってこられるときも、形式ばらずヒラヒラした感じで席に着かれ、演奏中もなんだか表情が和らいでいる。
終わった後はメンバー同士チークキス(?)だ。
なんておしゃれなんだ。
そして今日もマケラはかっこよかった。
指揮はもちろんカーテンコールでメンバーを称える時、アンコールにこたえる時、いちいち動作がキマっている。
人を威圧させない雰囲気がメンバーの方々に伝わっているのか(あるいはこの方々はいつもそうなのか)、そしてまた観客も変な話気楽に拍手できる。なので、今日もブラボーとスタンディングオベーションである。
二日にわたって、大有名曲だけを豪勢にプログラムしてくれたマケラ監督、本当にありがとうございました。

アンコールは昨日と同様、ビゼー:歌劇『カルメン』より前奏曲。
この曲が演奏されたら、観客のみなさんはあきらめて帰りましょう。
2025年6月21日 サントリーホール