樫本大進&アレッシオ・バックス デュオ・リサイタル 2025 に行ってきた。
曲目は
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.380
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」
2大巨人と1ユニーク
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ K.380
ふんわりした出だしだ。
力みのない運びで朝の散歩をしている様相。
高音は時にとろみのある装飾をほどこされてワクっとした。
大進さんとバックスさんは盟友というだけあって、息はピッタリ。
なのだがしかし。
表情が一致していないように感じた。
バックスのピアノは宝石があふれこぼれ落ちてくるようなきれいな音と、人が替わったかのようなパワフルさの両輪だと感じているが、いかんせん強いのだ。
モーツアルトの軽やかな流れ感とは違うのかなと感じた。
グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
骨太でメロディーもとらえやすい聴きごたえのある曲だ。
出だしはドラマチックに始まり、お2人の化学反応に期待が高まった。
大進さんの低音がいい。
ちょっとゴツっとした部分がありながらたっぷりしている。
全体モーツアルトと比べて音の体積が増したような感じがした。
ピアノがやっぱり大きい。
途中、どろどろっとなるようなところもあったようにも思ったが、2楽章の大進さんのピチカートは全然負けておらず力強く響いてきた。
グリーグはノルウェーの方ということで、バイキングっぽいのかな。
勇壮でスケール感のある演奏であった。
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」
冒頭、「ジャン!」と鳴ったその瞬間、来たーーーーー。
本気を出した、というわけでもないであろうが、すすすごい。
大進さんの主な成分、コク・キレ・ツヤがテンポよく活き活きと芳醇に響いてくる。
フレーズフレーズに性格づけがされていて、音色、速度、ボリュームを繊細に弾きわけ、それがつながって物語が生まれているようだ。
2楽章バリエーション2の高速弾きのところは、素敵の嵐で体温が0.7度ほど上がったと自覚したほど。
バックスもいい。
出るところ、引くところが明瞭で表情づけの息遣いも合っていて、「おお」と楽しくなるところが何カ所もあった。
アンコールもやってくれた。
ラフマニノフ:ヴォカリーズ。
澄んだ優しく切なさも感じられる、本編3曲とはまた空気の違う演奏であった。
七色の大進さんを聴けて贅沢だった。
さすがでございました。
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番「クロイツェル」2楽章2の素敵の嵐のところ
今回の演奏ではありません。
※アイキャッチは写真はJAPAN ARTS チラシより
2025年6月7日 サントリーホール