【ウィーン八重奏団2026】 来日公演の曲目・感想・聴きどころ(wiener Oktett)。

曲目一覧

モーツァルト:歌劇『フィガロの結婚』序曲(八重奏版)
モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
シューベルト:八重奏曲 ヘ長調 D803

公演日時・会場

2026年4月21日、サントリーホール

ウィーン八重奏団演奏の感想

モーツァルト 歌劇『フィガロの結婚』序曲

ふわっ。な入り。
「いたずらっぽいファゴットからの景気よいさび」ではなく意表をつかれた。
ファゴットは耳うちしてくるような「始まるよ始まるよ」感、さびもそれを受けた自然の流れなのだが、楽しいメロディーはくっきり出ている。
盛り上げは、ピアノから徐々に徐々にフォルテにもっていく感じとスピート感で、激しさはないのだが完全に惹きつけられた。
オーケストラの八重奏版であるが、何の不足も違和感もない。
オペラの人間の声の土台になる歌劇場仕込みのオーケストラの音がこれなのか、とうっとりだ。

モーツァルト クラリネット五重奏曲

八重奏から五重奏に編成変え。
テンポは速すぎず、遅くなく。
5人が丁寧に同期しながらの演奏だ。

第1ヴァイオリンのヤメン・サーディはウィーンフィルの20代最年少コンサートマスター。
音は鋭角で瑞々しくハーモニーを誘う音。
弱音が美しい。

ヤメン・サーディ

ウィーン八重奏団2026 メンバー
大注目のクラリネットはとてもよい音だ。
首席奏者のマティアス・ショルンさんは大柄。
身体からの息がクラリネットの管の隅々までパンパンに行きわたって発せられるのであろう、明瞭でしなやかな音。低音の響きはサキソフォンのように響き渡った。
漏れなく曇りなく流麗にモーツアルトの世界を聴かせてくれた。

マティアス・ショルン

ウィーン八重奏団2026 メンバー
フレーズ、フレーズに息遣いがあり5人のコンビネーションがはまっていて派手な抑揚はないが飽きない。

シューベルト 八重奏曲

五重奏から八重奏団に復活。
センターの左(向かって)にチェロ、右にコントラバスを挟んで左に弦班、右に管班の配置。
左の弦班が呼び右の管班が寄せる。
「はないちもんめ」のように渡し渡されるところがスムーズで第1ヴァイオリン、クラリネットがよい感じに立ちすぎない。
ソロはあくまでバランスの中で浮き出て引いていく。
曲を慈しんで命をふきこんでいるように感じた。

テンポの変化、微妙なタイミング、ppからffへの波、間、全てが水を漏らさぬ噛み合い方で一つの生き物のようだ。
弱音が丁寧できれいなのでフォルテが力技でなくても効く。
音の風景がみえてくるようで息をのんだ。

4楽章のかわいらしいところは弾むようにかわいらしく、チェロのソロは飾らずシンプルで少し甘い、プレーンバームクーヘンのような音で超素敵。

注目していた「ズラチャチャ ズラチャチャ ズラチャチャ ズラチャチャ」。
入る前に、チェロのヴォルフガング・ヘルテルさんとコントラバスの首席クリストフ・ヴィマー=シェンケルさんが目を合わせてタイミングで入っていくのが見え、興奮した。

クリストフ・ヴィマー=シェンケル

ウィーン八重奏団2026 メンバー

ヴォルフガング・ヘルテル

ウィーン八重奏団2026 メンバー

シューベルト 八重奏曲 4楽章。ヴィオラがズラチャチャ ズラチャチャのところ
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演奏:ウィーン・コンツェルトハウス四重奏団 (クラリネット)レオポルト・ウラッハ (ファゴット)カール・エールベルガー (ホルン)ゴットフリート・フォン・フライベルク (ベース)ヨーゼフ・ヘルマン 1951年録音。

ここでもヴァイオリン、ヴィオラともメロディーははっきりしながら柔らかに流れで、これに乗っていくクラリネットも波を完全に共有していた。
これが音楽というものか。

6楽章 冒頭の嵐。チェロとベースの”ヘリコプター”のところ。

シューベルト 八重奏曲 6楽章。”ヘリコプター”のところ。
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ベースがソフト、チェロもソフト。合わさっていくパートもソフト。
ラストに向け各パートが速度を速めながら弾んでいき、最後の最後まで丁寧な色付けが行われ、ピタリの八重奏で大変大変盛り上がった。

シューベルト 八重奏曲 6楽章。ラスト盛り上がりのところ。
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アンコール曲

大拍手の後、「はいはい、やりますよやりますよ」という感じでサーディーが楽譜を振りながらみなさん再登場し、キャーっという感じ。

・ヨハンシュトラウス2世:アンネン・ポルカ
もう1曲やってくれた。
・エドゥアルト・シュトラウス:ポルカシュネル「速達郵便で」
ウィーンフィルの方々、「これでおしまいです」と言わないと日本人は終わりませんよ。

再確認したのは、この方々はウィンナワルツの多様なテンポ、スピード感、抑揚をガラス細工のような精細さで全員で合わせることが骨の髄までしみていて、今日の演奏はそのバージョンだったのだなぁということだ。

びっくりするくらい最高でした。

ベルリン・フィル八重奏団との比較

2月にベルリン・フィル八重奏団のシューベルト 八重奏曲を聴いた。
ベルリンは奏者の個性をガンガンに出してはみ出てなんぼの音楽を作り、いざ合わせる時はバチっと合わせるといったスタイルで、ウィーンはまず一体化して全体が唯一無二の個性を作り上げているのだなと体感した。

※写真は武蔵野文化会館ウェブサイト、チラシより

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