ハンガリー・ブタペスト交響楽団 指揮:小林研一郎 ピアノ:亀井聖矢

ハンガリー・ブタペスト交響楽団 指揮:小林研一郎 ピアノ:亀井聖矢 に行ってきた。

曲目は
ロッシーニ:歌劇《セヴィリアの理髪師》序曲
リスト:ピアノ協奏曲第1番 ピアノ・亀井聖矢
チャイコフスキー:交響曲第5番

MCコバケンさん

—————–
“楽団員が全員着席を終える。指揮者 小林研一郎が登場する。
そして息をのむ瞬間が、くる。”
—————–
の構えでいたが、コバケンさんが手にしたのはマイク。
いきなりMCが始まった。

武蔵野には縁があるので武蔵野で演奏できてうれしい、本日チケット完売で感謝などと肩の張らないおしゃべりで会場もリラックス。
そして。ブタペスト交響楽団との縁も紹介された。
ご自身が指揮者になれるかどうかの崖っぷちだった34歳の時、たまたま年齢制限ぎりぎりのコンテストをみつけ参加した。100曲あった課題曲から自分が引いたのがセヴィリアの理髪師で、見事第1位を獲得した。
そのコンクールが第1回ブタペスト国際指揮者コンクールで演奏したのがブダペスト交響楽団だった。
今日来日のオーケストラの50年前のメンバーだということ。
で、一曲目が《セヴィリアの理髪師》序曲。
コバケンさんの歴史がほんの少し体感できる楽しい導入だった。
いきなり指揮者がMCは初めてだ。

ハンガリー・ブダペスト交響楽団は1945年にハンガリー国有鉄道(MAV)の社長によって創設された。
ハンガリーには別に、ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団がある。ハンガリー国立歌劇場専属のオーケストラだ。
ややこしいが、
ハンガリー・ブダペスト交響楽団は欧文表記だとMAV Symphony Orchestra。
ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団はBudapest Philharmonic Orchestra.

《セヴィリアの理髪師》序曲

団員は総勢70,80人くらい(?)の大所帯。
女性が圧倒的に多い。ヴァイオリンはほぼ女性で、金管が男性陣といった構成で壮観だ。

聴いたことがあるメロディーのヴァイオリンとヴィオラのカ所がきてうれしく盛り上がる。やはり序曲は楽しい。
ヴァイオリンは軽くもなく硬くもなく華美な感じはない。が、チェロと合わさると浮き立ってくる。
これがハンガリー・ブダペストの音か。

《セヴィリアの理髪師》序曲聴いたことあるメロディ―のところ。

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演奏:カルロ・マリア・ジュリーニ指揮 フィルハーモニア管弦楽団1959年6月9日~10日録音

リスト:ピアノ協奏曲第1番

ピアノは今をときめく亀井聖矢(かめいまさや)。

1楽章出だし。
勇猛だ。ライオンの大咆哮、チーターの走りのようなすばしっこさが合わさったド迫力な疾風がドゥガンとくる。
スマートな身体から繰り出される力技に息をのんだ。

全体、「強」のところは座っていられないほどに体重を乗せ鍵盤にのりあがらんばかりの大熱演。
聴いているこちらも、握った手が白くなるほどだ。

そのぶん2楽章のような「緩急」でいったら「緩」のところはためてためて流麗にはこない。
3楽章のかわいらしくトライアングルがなるところで装飾的にピアノが入るところはもう少しじゃれ合った感じがあったらなと思った。

「強」は聴く方も全力なので、「緩」ではうっとり聴き入る時間をくれてもよかったかなと感じた。

常に指揮者とソリストの方をよく見ながら演奏しておられてオーケストラとの一体感に注力しているのがよくわかった。

アンコールをやってくれた。
なんと。
リスト:ラ・カンパネラ。
超絶技巧で有名な曲を超絶技巧で有名な亀井さんが普通にやってくれた。
なんという贅沢。
とても優しく美しい響きで、そんなに大変な曲とはわからなかった。

リスト:ピアノ協奏曲第1番出だし。

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演奏:レナード・バーンスタイン指揮 (P)アンドレ・ワッツ ニューヨーク・フィル 1963年2月3日録音

チャイコフスキー:交響曲第5番

盛り上がったーーー。

もともと盛り上がる曲をめいっぱい盛り上げてくれました。

出だしはちょっときれがなくてもっさりかなと。
ソロ部分は想像よりも抑えめで、次のソロに渡していくところもなんかパラパラ?な印象。
コバケンさんちょっと省エネすぎやしないか?とさえ。

しかし、
全員がいったん合わさるとものすごい圧。
コントラバスがふくよかな広がりのある響きで全体を包み込んで立体感を伝えてきて最高に素晴らしい。
トロンボーンがバリバリッとした音で斬りこんできて激しくかっこよい。
トランペットもいぶし銀調に高らかになり、チャイコフスキーにピッタリだ。
流れもじっくりいくのではなく勢いづいていく調子がグイグイ引き込まれる。

音源だけではよくわからなかった響きが実際見ることでわかったこともある。
各パートが個別の旋律(?)を異なる奏法でやっている。
これが不思議な重層感の秘密か。
4楽章のオーボエがメロディーで追って弦がピチカートする”夢の国の音”を生目撃でこのようにそれぞれが鳴っているのかと興奮した。

チャイコフスキー:交響曲第5番”夢の国の音”のところ。

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演奏:ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 1965年9月22日、24日、27日&11月8日録音

アンコールをやってくれた。
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番。
コバケンさんがまたもMCになり、曲の紹介をされた。
「普通にハンガリーの方が演奏されるとこう」というパターンで演奏したあと、「自分は日本人なので、日本人風、コバケン風にやる」とおっしゃり始まった。

なるほど、これでもかというくらい伸ばしたり逆に速めたり。
エキサイティングで、見事な演奏だった。
コバケンさん、ちゃんと指揮していらしたではありませんか、と確認できた(失礼)。
ハンガリーのミュージシャンにハンガリー舞曲を日本のこぶしで演奏させるなんて 指揮者っていい仕事だわー、こんなことができるのもコバケンさんの年輪あってのことだなぁと感じた。

小林研一郎といえば「炎の」の異名をとるが、実際ご本人を舞台で拝見すると、ずいぶんと異なる印象だ。
音楽が好き、人が好きという純なお人柄があふれた、飾らないハートフルな方だった。

最後は大スタンディングオベーション。いつまでも拍手鳴りやまずでございました。

ブラームス:ハンガリー舞曲第5番。最初の部分。

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演奏:ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団 1962年9月5日&8日録音

写真は武蔵野市民文化会館ウェブサイトより

2024年6月24日 武蔵野市民文化会館

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