曲目
| 曲目 | 作曲家 |
| 2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043 | J.S.バッハ |
| ヴィオラ協奏曲 ト長調 | テレマン |
| 2つのチェロのための協奏曲 ト短調 RV531 | ヴィヴァルディ |
| ロマンス ヘ長調 op.50 | ベートーヴェン |
| ロマンス ヘ長調 op.85 | ブルッフ |
| 2つのヴァイオリンのためのナヴァラ op.33 | サラサーテ |
| タイスの瞑想曲 | マスネ |
| 妖精の踊り op.25 | バッツィーニ |
| ルーマニア民俗舞曲 | バルトーク |
公演日時・会場
2026年6月7日、サントリーホール
ベルリンフィルの精鋭がストラディヴァリウスを奏でる
登場するストラディヴァリウスはヴァイオリン7本、ヴィオラ2本、チェロ2本。
これにコントラバスとチェンバロが加わる。
総額200億円を超えるといわれているとある。
演奏するベルリンフィルの面々は来日時に「はい、どうぞ」と初めて楽器と対面しツアーに突入するのだそう。
そして、今回は全11回のツアー最終日、楽器との相性も合ってきたに違いない。
プログラムは満を持しての「大個人技お披露目大会」をうかがわせる。
大変に楽しみにした。
J.S.バッハ 2つのヴァイオリンのための協奏曲
ヴァイオリンはアンジェロ・デ・レオとハリー・ウォード。
アンジェロ・デ・レオ

ハリー・ウォード

2人を中心に半円で囲むという布陣。
全員起立、コントラバスとチェンバロは椅子だが、でかっこよい。
“ふっ”と鳴った瞬間、きらきらきらーと星屑が噴水のように拡がった?と感じるような煌めきふんわりとした音色が12.1サラウンドで届いてきた。
ここは天国か!? 今日来てよかったとすでに思った。
アンジェロとハリーはストラディヴァリウスのごっつい音にとろみを纏わせた音色で、顔を見合わせながら踊るように演奏している。
「ああして、こうして、ああなってこう」という流れに全員がのって、とても動的なバッハであった。
テレマン ヴィオラ協奏曲
中心に立つのは、ヴィオラのマルティン・フォン・デア・ナーメル。

“普段地味”といっては正しくないのであろうが中間部を支えるヴィオラが、朗々と歌っているようだ。
全身を大きく使って楽器に語り掛けているよう、締めるところで長い腕で長い弓を大きく振りぬく姿がダイナミックにキマっている。
こんな様子はオーケストラの限られたスペースでは絶対に見られない。
ヴィヴァルディ 2つのチェロのための協奏曲
奏者はチェリストの
待ってましたシュテファン・コンツとクヌート・ウェーバー。
シュテファン・コンツ

クヌート・ウェーバー

あばれコンツの”仕掛け心”を期待した。
やってくれました!!
冒頭で拍手しそうになりやばい。
ごついストラディヴァリウスであるが、チェロのストラディヴァリウスはさらに頑強さがあるようだ。
一音の重心が低くやすやすと伸びない。
この特性を活かして、ガッガッ ゴリゴリと荒々しく激しく、擦り上げるよう。
ウェーバーも勢いに拍車をかける。
コンツはヴァイオリン陣に首を向け煽る煽る。
大嵐の海で暴れる波が岩場を打ち砕いているような大スペクタクルな演奏であった。
2楽章は、穏やかな曲。
うってかわって静かな海な感じ。
ストラディバリから生まれる音、全部聞かせまっせという気概にあふれた時間であった。
客席からはブラボーというより感嘆の溜息とどよめき。
ベートーヴェン ロマンス
ハリー・ウォードのソロ。

3人分くらいの強く大きな音。
こちらもまた「ストラディヴァリウス、鳴らしてみせましょうどこまでも」といったところか。
若きエネルギー爆発の艶やかで濃密な音色をこれでもかとホールに響かせ、ソリストの風格だ。
ロマンスという感じでは正直ちょっとなかったが、そこはバックが完璧にふんわりした雰囲気を出してくれていた。
ハリー、今度単独でも来日してほしい。
ブルッフ ロマンス
ロマンス第2弾。
トビアス・ライフラントのヴィオラソロ。

打って変わって、ゆったりと深みのあるロマンスだ。
クセのあるストラディヴァリウスのクセを感じさせないまろやかな音色でうっとりした。
サラサーテ 2つのヴァイオリンのためのナヴァラ
登場したのは
シモン・ベルナルディーニとロクサーナ・ヴィスニエフスカ、ペア。
ロクサーナ・ヴィスニエフスカ

曲がまず楽しい、かっこいい。
ナヴァラはスペインの地名ということで基本ラテンな感じとオーストリア風?ダンス音楽な感じがあって、めまぐるしい。
素早く細かいメロディーが微妙なリズム感をもって展開されていくが、お2人が絶妙に絡みあってダンスしているかのような、遊び心ほとばしる演奏で視覚的にもとても素敵。
ロクサーナはスペインのご出身だそうでなるほどさすがにノリが見事であった。
マスネ タイスの瞑想曲
どなたが演奏されるのかと思っていたら。
ロクサーナ・ヴィスニエフスカ。

黄金色(こがねいろ)の鋼が艶やかに伸びていく堂々たる演奏。
タイスはまったりしっとりと聴くものと思っていたが、別物だ。
彼女で、ストラディバリで、この曲が聴けてとてもよかった。
バッツィーニ 妖精の踊り
きましたよ。
ルイス・フィリぺ・コエーリョ。

すごいすごいすごい。
妖精のぶっとびかたがパワフルだ。
ごまかしなし、はずしなし、漏れなし。
キマったカ所ではドヤ顔、中盤過ぎ山場すぎたときにはふっと息を吐く。
そして、最後の最後フィニッシュの時は弓が切れ煙が出た?ような感じであった。
聴いている方も緊張とワクワクの連続。
ここまでくると曲芸の域だ。
バルトーク ルーマニア民俗舞曲
バルトークの重さ、暗さなし。
リードはアレクサンダー・イヴィッチ。

この曲も定番の調子とは異なり、テンポ食い気味で緩急をシャープに出して目(耳)が離せない。
この方々に単調という文字はない。
アンコール
2曲やってくれた。
紹介はコントラバスのヤンネ・サクサラさん。

見事な日本語で曲紹介と挨拶をされ、とてもうれしい。
モーツァルト:ディヴェルティメント第2楽章
チャイコフスキー:弦楽のためのセレナード第2楽章
ツアーの別プログラムから。
ツアー最後ということでかアンコールは打ち上げムード。
みなさんリラックスしてホームパーティーでもやっているかのご様子。
モーツアルトはこんなのあり?というくらい、スピード感、リズム感が新しい。
本プログラムの時もそうだったのかな、全編聴いてみたかった~。
ホールは大興奮状態、ワーキャー(抑制された)&大拍手鳴りやまずであった。
全体をとおして、歴史的なストラディヴァリウスを大切に扱うのではなく、300年前の楽器に今の空気を存分に呼吸させてやろうぜというアグレッシブな演奏だったように感じた。
最後に、ツアー主催のPCM代表の方と株式会社文京楽器の方(?)が登壇され「ストラディヴァリウスを集めるのはとても大変だった。でも、よい楽器はトッププレイヤーに演奏されてこそ音楽が生まれる」のように話されて、本当にそうだなと思った。

※アイキャッチはチラシ、プロフ写真はBerliner Philharmoniker siteより
