ストラディヴァリウス サミット・コンサート2023

ストラディヴァリウス サミット・コンサート2023に行ってきた。

ベルリンフィルのメンバー12人が、ストラディヴァリウスを使用して演奏するコンサートだ。
恒例演奏会で今年が13回め。

曲目は
・J.S.バッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調 BWV1043
・テレマン:ヴィオラ協奏曲ト長調
・ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲ト短調 RV531
——–
・チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレ(弦楽四重奏第1番2楽章)
・サラサーテ:2つのヴァイオリンのためのナヴァラ op.33
・マスネ:タイスの瞑想曲
・バッツィーニ:妖精の踊り
・バルトーク:ルーマニア民族舞曲

チェンバロ奏者のシャレフ・アド=エルを含めて13人編成。
ストラディヴァリウスのヴァイオリンは世界でおよそ600挺といわれている。
ヴィオラはなんと10挺ほどしかないという。そのうちの2挺がここにある。

前半はThe バロック。
バロック3巨頭
・J.S.バッハ
・テレマン
・ヴィヴァルディ
をバロック音楽の時代に作られた楽器で演奏するというタイムマシン体験。

後半は耳なじみのある素敵なメロディーを世界最高峰のプレイヤーが世界最高峰の楽器で演奏するという、宝石箱状態。

曲ごとにメインのプレーヤーが交代し、お1人お1人の演奏と楽器1つ1つの音色が披露されていくという豪華すぎる発表会だ。

The バロックで17,18世紀をしっぽり味わおうと思ったが、いやいやアクティブで汗ばんだ

1曲目はバッハ:2つのヴァイオリンのための協奏曲。
メインは第1ヴァイオリンのゾルタン・アルマジと、第2ヴァイオリンのクリストフ・ホラーク。

ゾルタン・アルマジ

クリストフ・ホラーク


鳴った瞬間、無重力空間か?と思うほどホール全体がふわっっと響きに包まれた。
メインお2人がセンターで少し前、そのほかのパートも少しずつ前後に位置している。
そのせいか、12.1chサラウンド(5.1chサラウンドならぬ)的に各音がくっきりとしかも立体的に届いてくる。

ゾルタンさんのストラディヴァリウスは優しく美しい。
がっしりとした体形に似合わず(失礼!)女神だ。

テレマン:ヴィオラ協奏曲。
ヴィオラのソロはマシュー・ハンター。

マシュー・ハンター


ハンターさんのストラディヴァリウスは「木」の音。
ああ、ヴィオラは木でできているんだっけな、と思い起こさせる生の木の声を聞いているかのように感じた。
変な話、音が出にくそう?
かと思えば、高音は滑らかに伸びる。
これがストラディヴァリウスなのかなと。

ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲。
チェロはオラフ・マニンガー、シュテファン・コンツ。

オラフ・マニンガー

シュテファン・コンツ


コンツさんかっこよい。
長い指がチェロの指板を上に下に別の生命体のように滑り、ちょっとジャズっぽい音を生んでいる。

バッハは12.1chサラウンドだったが、ヴィヴァルディは一体化。
それぞれが融合してオーケストラの演奏的だ。

一貫してハートをわしづかみにされるのはヤンネ・サクサラさんのコントラバス。

ヤンネ・サクサラ

「ぶん」という一音が、魔法のじゅうたんのように全体を浮き上がらせる。
サクサラさんがチームの世界をつくっているといっても過言ではないだろう。
コントラバスはストラディヴァリウスではなく、ご自身の楽器かもしれない。
胴の厚みが膨らんだように丸っこい形をしていた。

後半の単曲はただただ楽しい

チャイコフスキー:アンダンテ・カンタービレは、メインがオラフさんのチェロ。

競馬の騎手が暴れ馬を「よーしよし」と落ち着かせながら気を合わせて最高のパフォーマンスを出させるがごとく、ストラディヴァリウスを弾くというよりはオラフさんが楽器の意思をききながらコミュニケーションを通わせて楽器自身に歌わせているかのような丁寧な演奏だ。
飾り気のない響き過ぎない音がしみわたってくる。

サラサーテ:2つのヴァイオリンのためのナヴァラ。
シモン・ベルナルディーニとシモン・ロテュリエのWシモンズ

シモン・ベルナルディーニ

シモン・ロテュリエ


超絶技巧がある。
どのようにするとあの音になるのか、見届けようと耳ばかりでなく目も凝らしたが・・速すぎでわからなかった・・・。
1つわかったことは指使いではなく、弓の使い方次第でとんでもないヴァリエーションが生まれているのだということ。
お二人の息はピッタリで、硬いのだけれどまろやかでキレのある競演にブラボー。

YouTube naxos japanチャンネルより

マスネ:タイスの瞑想曲。
出ました。ソロはホラークさん。

ホラークさんはスッとまっすぐに立って髭のせいもあるのか、刀を弓に持ち替えた武士のようだ。

強く密度の濃い音。
それを小さく小さく支える各パート。
たっぷりとつからせていただきました。

YouTube naxos japanチャンネルより

バッツィーニ:妖精の踊り。ソロはルイス・フィリペ・コエーリョ。

ルイス・フィリペ・コエーリョ


超超超絶技巧を目の前で聴けるときがきた。
だが。席の関係だと思うのだが指ではじくところや弓を弾ませるところなどの細かな部分が聴き取れなかった!痛恨。
ルイスさんの活きのよさは楽しめた。

YouTube naxos japanチャンネルより

バルトーク:ルーマニア民族舞曲。
ゆっくりとしたテンポで入り、「むかーしむかし」と昔ばなしを話しているよう。
曲の切り替わりは物語の場面転換のように感じた。
バランスがとってもよくそろっている。
フィニッシュがかっこよい!

アンコールはなんとキュッスナーさんが日本語でご挨拶され大盛り上がり。

ヴァルター・キュッスナー


2曲演奏してくれた。
・チャイコフスキー:弦楽セレナーデより ワルツ
・モーツァルト:ディヴェルティメント K136より 第3楽章

ああ、これはもうベルリンフィルだ。

2023年5月31日 東京オペラシティ

写真はBerliner Philharmoniker ウエブサイトより

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