エマニュエル・パユ&エリック・ル・サージュ ~モーツァルトのソナタ~ に行ってきた。
曲目は
モーツァルト:ソナタ 変ロ長調 K378
:ソナタ ト長調 K379
ライネッケ:フルート・ソナタ 「ウンディーネ(水の精)」 Op.167
シューベルト:「しぼめる花」による序奏と変奏曲
モーツァルト:ソナタK378、K379
フルートのメインの音域が低音。もともとヴァイオリン用のソナタだから。
その低音の波動が球状にホールいっぱいに響いてくる。
あのフルートの小さな歌口からどれだけ息をいれたらこんなに広がるのだろうか。
ともすれば低音で秋の落ち着きをかもしだしているフルートに、ルサージュのボリューミーなピアノが活力を注ぐ。
音を切ったり滑らかにつなげたり、囁いたり太かったり表情がいろいろで小さなサプライズがちりばめられていて、かわいいだけのモーツアルトだけではない。
「モーツアルトの曲は譜面に忠実で自己表現を出さないように気を付けなければならない」とインタビュー記事にあった。そのうえでパユ&ルサージュがモーツアルトを演奏するとこうなるのだな、モーツアルトに聴かせてあげたい、と思った。
ライネッケ:フルート・ソナタ 「ウンディーネ(水の精)」、シューベルト:「しぼめる花」
ライネッケだ。
モーツアルトが体に幸せに充満していたので ゆったりと超上質なフルートを堪能するつもりであったが、とんでもなかった。
流麗でとろけそうと思ったのはいっとき。
徐々に野生みが溢れだしてくるではありませんか。
ちょっとザラっとした音、刻まれるテンポ。
太くごつい感じがあると思うと、速吹きは旋風のようにウワっっときてふっと通り過ぎていく。
コロコロと切れ目なく変化する奏法でドキドキワクワクである。
「しぼめる花」。こちらもただごとではない。
最初、普通の自転車が徐々にターボ搭載になり加速度的にパワー全開、かと思うと一輪車がくるくると回るように軽やか、次は超音速ジェット、そしてまた自転車・・・。のようなまさに変奏曲。
「しぼめる花」ってこんなにエキサイティングなんだゼとお2人が楽しんで披露しているような感じであった。
最後は、パユ様の煌めく高音大フォルテで大団円。
しぼめる花は全然しぼんでいなかった。その次の再生への力がみなぎった演奏だった。
パユ&ルサージュの演奏は楽器の演奏を聴いているというよりは、お2人の世界に引き込まれて音楽宇宙をバーチャル体験しているようだ。
アンコールもやってくれた。
クララ・シューマン:3つのロマンス Op.22より第1曲
マーラー:歌曲集「亡き子をしのぶ歌」より 4. ふと私は思う、あの子たちはちょっと出かけただけなのだと
正統的美しい演奏で、クールダウンできたような気がした。
サイン会があった。
CD購入で、というのが一般的ではあるが、パユ様&ルサージュさんは他のものでもまったくこだわらずに和やかに対応されている。
ほぼCDをもっている身としては、購入CDがなくなったらサイン会に並べないかな、2枚はいらんのよね、と思っていたが安心した。
こういったところが昨今の”推し活商法”とは基本的に異なるファンサで本当に素敵だ。
また新譜も出してほしい。

エマニュエル・パユ『フルート協奏曲 & コンチェルタンテ作品集』14枚組 2025年9月19日発売
パユ様、体調もよさそうでさらにうれしかった。