パユ様 SOLO Vol.4

エマニュエル・パユ SOLO Vol.4 に行ってきた。

曲目は
イベール:小品
ジョリヴェ:《5つの呪文》から第1曲「交渉相手を迎えるために ─ そして会見が和解に達するように」
J.S.バッハ:《無伴奏フルート・パルティータ》イ短調 BWV1013から「アルマンド」
ジョリヴェ:《5つの呪文》から第2曲「生まれてくる子が男であるように」
J.S.バッハ:《無伴奏フルート・パルティータ》イ短調 BWV1013から「クーラント」
ジョリヴェ:《5つの呪文》から第3曲「農夫の耕す田畑の収穫が豊かであるように」
J.S.バッハ:《無伴奏フルート・パルティータ》イ短調 BWV1013から「サラバンド」
ジョリヴェ:《5つの呪文》から第4曲「生命と天地の穏やかな合致のために」
ギスラドッティル:レイジー・ヴィーナス・シンドローム(オール・バイ・イットセルフ)(2024)
J.S.バッハ:《無伴奏フルート・パルティータ》イ短調 BWV1013から「ブーレー・アングレーズ」
ジョリヴェ:《5つの呪文》から第5曲「首長の死へ ─ その魂の庇護を得るために」
トレス:呪文(2019)
ニールセン:《母》op.41から「子どもたちが遊んでいる」
ピルヒナー:記念碑の代わりに…(1986)

“不穏”と間にバッハの構成

共演者と合わせることなく、自分だけで世界を作り上げていく演奏会。その4回目だ。

「5つの呪文」と「呪文」、そして「記念碑の代わりに」というこれは戦時中に殺害された恩師の兄への記念碑として作られた曲だそうで、不穏が漂う曲と間にバッハがサンドされるという構成。

Vol.3が2022年、2023はコロナ、2024は中国演奏ツアーで来日がなく、客席のボルテージはすでに最高潮。

神業でなくパユ業

イベール:小品は曲自体はおっとりした曲に思うが、お囃子の笛が高・中・低3人いて、それぞれがユニークに動き回っているようないろいろな音が激しく飛び交う感じ。
フルートを尺八のように強い息で鳴らしていたことに驚いていた過去であるが、今回はそんなレベルではなかった。

5つの呪文がまた恐ろしい。
強く鋭い音や、嵐のようなうねる音色は切先鋭い真剣となって行き交っているよう。
難しい曲を綺麗にというフルートの概念を破壊する激しさで緊張感で息をのむばかりだ。
呪文というより大魔王の呪いが襲い掛かってくるよう。

トレスの呪文はさらに恐ろしい。
水道管に穴が空いてそこからピューっと出続けているような音や、カーレースで車が通り過ぎていくような音。
唇をリッププレートで震わせて、そしてまたブーッという声も合わさったかと思うと水琴窟のような遠くで済んだ音が鳴っている。
これはパユのためにトレスが作曲したそうで、「これはどうだ!」「こんな感じ?」と作曲家のチャレンジとそれを軽々と超えてくるパユとの計り知れないセッションで結果こんな曲になった、といったところではないか。

フルートという楽器の機能を開拓する実験大会という感じ。
音が出たからといってほかの人は再現できないですわぁ。

ほかにもキイを打楽器のようにパタパタ鳴らしたりなど、すごいを超えて唖然。
神業を超えたパユ業だ。

バッハを間に入れてくれてありがたい。
ちょっと安らげる。だが、のんびりはしてるわけにいかない。
たっぷりと管に息を吹き込んで低音も太くボリューミーで柔らかく振動が広がっている。
テンポはさておき思う存分管を震わせていて、ちょっとバロックという感じではなかった。

休憩なしの1時間半。
曲の間も30秒なかったのではないだろうか。
ついさっきまで、強烈に演奏していたのに何事もなかったかのようにさらっとされている。
ときおり置き場に置いてある水を含むくらい。

いったいどれだけの体力なのだろう。
技の練習というよりは身体のトレーニングによって生まれてくる音楽なのではないか。
エベレストを駆け上っていくくらいの肺活量はあるに違いない。

かねてからパユ様のライブ録音音声を海外でのものも含め販売してくれないかしらと思っているが、今回の演奏はCDでは無理だ。

なんと、アンコールもやってくれた。
ドビュッシー:シランクス。
これ普通メインでしょう。贅沢であった。

花束を渡した方がいらした。
その花束をカーテンコールで出入りの間もずっと前に持たれていて、アンコール演奏の時は水置き場にそっと飾って演奏を始められた。
真心だ。

今日もサイン会。演奏後も多くの方が売り場に集まっていた。数百人になるのではないか。

すごすぎる。

2025年7月9日 東京オペラシティコンサートホール

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