GOD of Flute エマニュエル・パユ、2022夏の来日演奏・その2.待ってましたSOLO vol.3です。
SOL vol.2が開催されたのが、コロナ前の2019年12月でしたので、約2年半ぶりのただ1人ライブでございます。
場所もVol.2と同じく東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアルです。
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第3番
・ブーレーズ:メモリアル(1985)
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第4番
・モンタルベッティ:Memento Emmanuaile(2019)
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第8番
・マヌリ:なおのうごめき(2020)
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第9番
・デスプラ:エアラインズ(2018)
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第11番
・ジャレル:点は、万物の始原であり…(2020)
・テレマン:無伴奏フルートのための幻想曲第12番
テレマンは18世紀の作曲家で、20世紀・現代の作曲家と交互に演奏するプログラム構成です。
現代曲4曲の演奏
ぐっっったりです。
あまりに集中し、世界最高峰のパフォーマンスを密度高い熱量で浴び続けたからです。
すごい、すさまじい。
現代の作曲家の4曲が衝撃でした。
これらの曲はそれぞれ作曲家がエマニュエル・パユのために作曲したものだということで、最初から最後までパユ仕様なのです。
特徴は、ひとことで言うと「曲じゃない」ということです。
拍もメロディーもあったものではありません。
チューニングされたF1カーが最高速度で疾走する爆発的エネルギーを体感したようです。
フルートの”澄んだきれいで滑らかに奏でられる音色を楽しむ”というイメージを完全に覆す、これは演奏というより”気”です。
フルート-和笛
共通するのは、和テイストです。
例えとしては、NHK大河ドラマ「独眼竜政宗」のオープニングテーマの冒頭強い笛の「ピヨヨーーー ピーーーー」のイメージ。
雅楽の龍笛、能・歌舞伎の能管・篠笛そして尺八を彷彿とさせる音をフルート1本でオールマイティーに繰り出しているのです。
龍笛
尺八
パユ様は日本の作曲家・武満徹をリスペクトされているので、そのオマージュを込めているのかもしれません。
SOLOの会場も東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアルです。
和笛は舞台の状況や人物の感情の表現を助ける役割があり、西洋音楽と異なりメロディーを主にしたものではありません。
今回の4曲も和笛による和奏法笛なフルート演奏と理解すればよいのかなと思いました。
フルートの再定義版ともいえるでしょう。
息遣い・強弱が百花繚乱、高低が逆ジェットコースター(下から上へ勢いよく上昇)、全体そよ風からハリケーンの渦がホールに充満します。
人間エマニュエル・パユの技術・表現になんとかついていこう、1つの瞬間も聞き逃すまい見逃すまいと、ほぼ息もできないくらいです。
周りの観客の方もピクリともしません。
間にテレマンが入るのが、ほっと一息、楽しむフルートの時間、といった感じです。
とはいえ、テレマンも、一体何人でこの音を出しているの?と思えるほどの多様な音色とフレージングで飽きることがありません。
拍手も
パユさんは、曲が終わったごとの拍手は好まれないようです。
つくりあげた空気のなかで曲を紡いでいくという発想がおありなのではないかと思います。
プログラムも11曲通しで、休憩時間なしです。
現代曲の後に、せいぜい1分程度舞台上で水を採る進行です。
ただ、こちら観客もやはりちょっと拍手したいという思いもあり、軽くする流れがありました。
パユさんもちゃんと挨拶してくれて。ここで少しリラックス。
1時間25分、ぶっ通し
現代曲で注目していたのが「エアラインズ」です。
この曲にpppの10秒くらいのロングトーンがあり、どうなっているのか確認したかったのです。
普通に、なんでもないように吹かれていました。細ーい柔らかーいまっすぐな音が確かに9秒くらい、その後の空白をしっかりとるところまで目視できました。
曲の最後の拍手が鳴りやみません。だってみんな2年半待っていたのですから。
そして。
なんとアンコールをしてくれたのです。
しかも2曲も!
1曲目は「エアラインズ」、再びロングトーンを体験することができました。
都合1時間25分、ぶっ通しでした。
ランニングでいったらいったい何キロの全力疾走に相当するのでしょうか。
世界最高峰の、そして歴史的にもこのような新たなチャレンジをし続けているフルーティストはいないのではないでしょうか。
2年半ぶり、ほんとうに充実した夜をありがとうございました。
(2022年7月11日 東京オペラシティ コンサートホールタケミツメモリアル)