樫本大進&ラファウ・ブレハッチ デュオ・リサイタル に行ってきた。
曲目は
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第17番
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
武満徹:悲歌
フランク:ヴァイオリン・ソナタ
なんてバラエティーに富んだ、年末を華やかにしてくれるプログラムなのでしょうか。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第17番
ブレハッチのピアノはとても透明感があって転がるようなきれいな音。
軽やかなモーツアルトで、モーツアルトだったらこんなふうなのかなと思わせてくれるよう。
星の王子様のようにキラキラした演奏だ。
われらが樫本大進のヴァイオリンは。軽くはない。
高音はいつものように美しく通っているのだが、中低音がなんだか力んでいるように聴こえ、モーツアルトの弾んだかわいらしさはないようだ。
ここは初めてのブレハッチのピアノを聴こう。
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番
ぬぬぬ。モーツアルトでの違和感が強まった。
「ヴァイオリンが風邪? 」とも思えるがさっとした音がある。
低音が響かない。
ブレハッチは、ペダルのない足で床を蹴って調子をとっていたりするのだが、ヴァイオリンが一人力づくで走って合わさっていない感じ。
ヴァイオリンの表情が一辺倒で盛り上がるときに盛り上がらない。
2人でのシナジーが乏しいように聴いた。
うう~ん。
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ
ベートーヴェンから休憩を挟んで、ドビュッシーだ。
お! 戻ってきた。
いつもの樫本ヴァイオリンのたっぷりした音が。
ピアノとの連携もよいよい。
1楽章の、ピアノの粒がこぼれ落ちて流れていくようなところも素敵です。
ドビュッシーの、湧き出てくるような不思議な音の綾もピアノとヴァイオリンがうっとりと作り出している。
2楽章の聴きどころはピアノのメロディーとそれを飾るヴァイオリンのピチカート。
テンポよく動きのある演奏で楽しい。
技もキレている。
ヴァイオリンの”超高音連続打出し”の「キキキキキキキ」に出たーーと喜んでいるうちに、3楽章もあっという間に終わった。
武満徹:悲歌
初めて聞く曲で、メロディーがなくはっきりいって難解な曲であったが、ヴァイオリンの様々な音がゆっくり味わえて、落ち着いて聴き入ることができた。
日本人なら日本人作曲家を聴きまっしょとは思うものの、なかなか・・。
フランク:ヴァイオリン・ソナタ
安心の入り。
フランクのヴァイオリン・ソナタはわかりやすいメロディーで楽しんで聴ける。
2楽章ピアノが聴きどころ。
ブラハッチは、弱い弱い音が「静」なのだけれど体積があるというか次の「動」につながっていくような生命をたたえている。「静」が徐々に徐々に渦になりハリケーンになるようなうねりの響きが素晴らしい。
2楽章と3楽章の間で音合わせ。わりと時間をとっている様子。ぜひぜひ時間はとってくださいね。
3楽章はよかった~。低音も艶がありよい響き。
これを待っていましたよ。
この楽章は場合によっては退屈に感じたりまた驚くほど盛り上がったりするが、今回はその間。さすがに聞き応えはあったが「以上。」という感じであった。
後半、樫本ヴァイオリンの活きは戻ってきたものの、力で押して最後こなしたかなという感じではなかったか。
ブラハッチは小さな音がとってもきれいでボリュームの大迫力もまたカッコよい。
おふたりのコラボレーションからのユニークな表情があるとよかったなと。
アンコールは今回のプログラムのベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番3楽章。
最初の時よりもよかった。
モーツアルトももう一回やってもらえたらなと思った。
ドビュッシー:ヴァイオリン・ソナタ2楽章「キキキキキキキ」のところ。
演奏:ヴァイオリン:マックス・ロスタル、ピアノ:コリン・ホースリー 1957年録音
2024年12月19日 サントリーホール