ソフィエフ指揮、NHK交響楽団、ストラヴィンスキー ブルチネッラ、ブラームス交響曲1番、 に行ってきた。
曲目は
ストラヴィンスキー:組曲「プルチネッラ」
ブラームス:交響曲 第1番
ストラヴィンスキー 組曲「プルチネッラ」
バレエ音楽だ。
「プルチネッラ」のあらすじとしては、陽気なモテモテ独身男性ブルチネルラをめぐるおばかなドタバタ劇といったところ。
全体明るい調子で、キュートな踊りが浮かんでくるような曲だ。
ソフィエフがどのようにかわいらしさ、いたずらっぽさ愉快さを出してくるのかを楽しみにした。
美しかった。
弦のきれいな音で入ってきた。
この曲は登場人物を象徴してか、パートソロが特徴をもって奏でられるのが楽しいポイントだ。
オーボエの伸びやかで表情豊かな響きがオーケストラに活力を注いでいるところや、ファゴットのテンポよい刻みが聴き手の期待度をあげてくるところはワクワクした。一方、ソロ全般としては遠慮気味というか行儀よくあまり尖っていない感じがした。
トロンボーンのちょっとずっこけたような聴きどころが好きで大注目していたが、
音はいいのだが肺活量ももっとだして、もうちょっとばかばかしく遊んだ感じがあってもきっとソヒエフさんはOKだったのではと思った。
弦が不協和音的に混ざって面白いところも、もう一つさらっといってしまって、全体まとまったノリに欠け、愉快な感じは弱かったかなと思った。
コンサートマスターのまろさんはさすが。
キングの輝きとクィーンの柔らかさで際立っていた。
最後の盛り上がりは、ソヒエフと一体になってキマり、満足であった。
トロンボーン聴きどころのところ。
ブラームス 交響曲 第1番
退屈か、劇的か。この曲は演奏によってどちらかに分かれるように思っている。
ソフィエフ・ブラームスはさあ、いったいどっち!?
一瞬も退屈なし。
重厚に華やかさをまとった仕上がりだった。
1楽章でだし。
出だしのテンポは遅すぎず速すぎず。
隅々まで絵具を塗り込めるような丁寧な指揮にオーケストラが濃密にはりつく演奏で、今日はすごいぞの予感がした。
2楽章は弦を聴く。
弦がお互いバランスよく融合していて響きがそろって空気で届いてきた。
コントラバスのほどよいボリューミーさがよい。
最後のまろさんのヴァイオリンソロは音質といい歌いといい”その演奏しかない”と思う研ぎ澄まされた音色。聴き入った。
3楽章は木管。
クラリネットからつないでいく連携はスムーズで推進力があり、ともすれば気を抜く楽章ではあるが、そうならなかった。
弦のピチカートも立っていて耳にうれしい。
4楽章。
ブラームス交響曲1番は、正直暗いのだか明るいのだか、威勢がいいのかしっとりなのかつかみどころのないパッチワーク的曲だなと感じている。
単調かと思うと、いきなり素敵なメロディーが出てうれしくなるという風だ。
「The わかりやすいメロディー」が、4楽章のベートーヴェン第9に似ているところ。
もちろん楽しみにした。
ここは繰り返しがあるが、ソヒエフは最初と2回目の雰囲気を変えたような感じがした。
最初はテンポよく軽めでそれも気に入ったが、2回目はたっぷりめになっていたような。「おお! そういうことがあるのか」とびっくりした。
終盤の盛り上がり。ここもすっごくかっこよく「ガンダム発進!」のような(個人のイメージです)クライマックスなところであるが、ソヒエフ・N響も全員が一体化して少しのズレなく強力に発進してくれた。
ここもまた、終わるようで終わらずモタモタする感じがあるカ所なのだが、今回は「終わらないでモタモタ続けてー」と思いながら聴いた。
ソヒエフがオーケストラ全体をオブラートで包み自在に伸び縮みさせているようなファンタジアの世界のような演奏で、寒い冬から木々芽が力強くふいてくるような明るい希望が満ちたエンディングであった。
特筆は吉村結実さんのオーボエ。
ブルチネッラ、ブラームスと通して独壇場、突き抜けていた。
まろさんこと篠崎史紀さんはN響の定期演奏会最後の出演だそう。
カーテンコールで、ソヒエフは花束を贈呈しまろさんを讃えた。
カーテンコールが終わった後も、この時を記憶しようと観客のみなさんは舞台前方に集まった。
演奏:ジョージ・セル指揮 クリーヴランド管弦楽団 1966年10月7日録音
2025年1月25日 NHKホール