指揮グスターボ・ドゥダメル、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、『エグモント』チャイコフスキー交響曲第5番 に行ってきた。
曲目は
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』 Op.84〔クリスティーナ・ランツハマー(ソプラノ)、宮本益光(語り)〕
チャイコフスキー:交響曲第5番
コンサートマスターが樫本大進!!
すでに拍手がすごい。
ベートーヴェン:劇音楽『エグモント』
序曲だけではなく、全部。
オーケストラに加え、バリトン歌手の宮本益光さんが(オペラ的)語り、ソプラノのクリスティーナ・ランツハマーさんがエグモントの恋人役クレールヒェン役として歌う。
まずは、聴きなじみのある序曲。
いきなり低い弦が強く厚くキレよく、暗黒漂う感じがもりもりだ。
オーボエが悲しさ、切迫の場面を表しているようでアルブレヒト・マイヤーさんのオーボエが柔らかくまっすぐに染み入ってくる。
全体英雄エグモントが処刑されるという悲劇であるが、そこまで絶望的ばかりでない。
フルート、弦が抑えめながら細やかに情景を映すメロディーがとてもきれいだ。
弦のハーモニーは、きめの細かい泡がぶわっと湧き出てくるような広がりでこちらの体も浮くような気がする。
情景を作るドゥダメルとオーケストラの呼応は、想像する雰囲気として。
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ドゥダメルが自由自在に空を飛び回りながら魔法の筆でカラフルに描いた音楽の絵があって、それを楽団員一人一人に見せびらかす。すると奏者は”こんな風でしょ?”といわんばかりにその絵を再現してみせる。
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というくらいお互いがノリあっているのかなと感じた。
宮本益光さんは日本語であるせいか、特に出だしはドゥダメルは宮本さんをよく見てタイミングを合わせているのが見て取れた。
歌手とオーケストラは息遣いで合わせているのだなということがよくわかった。
最後、エグモントが処刑される場面のトランペットは威勢がよいトランペットではなく深く響き弦との融合がされたとってもよい音であった。
エグモント宮本さんの最後は迫力であった。
チャイコフスキー:交響曲第5番
ドゥダメルはアクセントと間と超弱から強への加速の人。
1楽章 出だしは遅くなく速くもないのだけれど、アクセントと間ではずむ感じ。
1楽章からすでにマックス。
弦が王者で、ハーモニーとはこれかという震えるような重層感はふわっとはまた違う地鳴りのような振動だ。
最強も迫力なのだが、そこにもっていくまでの間の弦の胎動がボリューミーで飲み込まれそう。
2楽章 暗いくらい弦の出だしからのホルンが注目であるが、今回はシュテファン・ドールさんではなかった。ちょっと細い音であった。
木管軍団もまったりとしながらテンポにのり、そして泣けるヴァイオリンはまたまた強く優しくでこれもよく、ティンパニも効いている。
パユ様のフルートも素敵でございました。
ここで、ラッキーな場面に遭遇した。
配置として第2ヴァイオリンは舞台向かって右側手前。
主席のマレーネ伊藤さんの弦が切れた!
それを2列目のライマー・オルロフスキーさんに渡す、ライマーさんが隣の方に「弦ある?」と尋ねていたら(おそらく)、4列目のフィリップ・ボーネンさんがすかさずポケットから取り出して、床を滑らせて投げた。
しかし、これが届かない。気が付いた途中の方が前へ前へと動かし無事ライマーさんがゲット、修理に入った。
これまで、2列目の方が次々に後ろに渡して一番後ろの方が直すという場面は何回か見たことがあったが、まさかあの最高峰(まあ皆さん最高峰なのだが)ライマーさんが直すとは! 優しい!! との感激と団員の方々の連携に打たれてしまい、第2ヴァイオリンから目が離せなかった。
3楽章 ワルツなのだが、ドゥダメルにかかるとワルツでものんびりしてはいられない。
リズムとバランスが記憶にあるパターンと違うところがあり弦がさらに超美、こんな風だったんだと新鮮でびっくりした。
4楽章 1、2、3楽章でこんなに盛り上がっちゃって4楽章どうするの?
と思っていたらすごい世界が待っていた。
ドゥダメルはコンマ何拍(?)前倒しで攻めてきて手に汗握る。
ただボリュームが大きいのではなく微妙なリズム テンポ調整でこちらの心拍数が上がってくるのだ。
低音の金管がブンブン鳴り弦軍団が思いっきり。
ビタッと揃ったラインと幾重にも重なりまじりあうハーモニー、そしてスパーク。
ここまでくると狂気な感じですごい。
さんざん皆が聴いている曲をこんなにもエキサイティングに仕上げてくる、これがドゥダメルワールドか。
最後ドゥダメルがライオンキングに見えてきた。
※写真はフェスティバルホールウェブサイトより
2025年7月2日 フェスティバルホール