イ・ムジチ合奏団「四季」をやらないコンサート2025

イ・ムジチ合奏団 に行ってきた。

曲目は
ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲ト短調 RV 531
ジェミニアーニ:合奏協奏曲第12番ニ短調「ラ・フォリア」
ヴィヴァルディ:フルート協奏曲 ヘ長調「海の嵐」op.10-1, RV433
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第2番 ロ短調BWV1067
アントニオ・マルコトゥッリオ:《広島・長崎被爆80周年に捧げる新作》The Two Flowers(二輪の花)
レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
ショスタコーヴィチ(L.ペッキア編):5つの小品
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲

イ・ムジチは子どものころモーツアルトくらい有名で、幻とさえ思っていたが、本物に行ってきた。

ヴィヴァルディ、ジェミニアーニ、J.S.バッハ

ヴィヴァルディ:2つのチェロのための協奏曲ト短調 RV 531
冒頭から素晴らしい選曲でわくわくしていた。
しかし。
はぁ~?
チェロ2台がたっぷりと入って”急”となっていきかっこよい、はずが。
音が小さい。びろびろとした音で、弦緩んでませんか? という感じでずっこけた。
チェンバロもよく聴こえず単調で、調律師のほうがいい音だった。
その後もインパクトなし、メリハリなしでだらだらと終わった。

ジェミニアーニ:「ラ・フォリア」
こちらも、たらたらしてはっきり言って退屈。
コンマスのツヤはあって伸びのないヴァイオリンは突出しているが一本調子。

ヴィヴァルディ:フルート協奏曲 ヘ長調「海の嵐」
フルート独奏は工藤重典さん。
この曲は好みでとても楽しみにしていた。
「お願い、嵐よ来て」と期待したが、こちらも盛り上がらず。
工藤さんも速吹きのところは息も絶え絶えといった感じで弦がつられたのか、フルートが弦につられたのか、曇天という感じであった。

バッハ:管弦楽組曲 第2番 ロ短調BWV1067
こちらは、よかった。
特に、最後のバディネリはフルートの音もきれい、軽妙感もあり弦とも一体化していて、楽しかった。

バッハ:管弦楽組曲第2番 バディネリ。最初。
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演奏:カール・ミュンヒンガー指揮 (Fl)ジャン=ピエール・ランパル シュトゥットガルト室内管弦楽団 1962年録音

工藤さんがソロでアンコールを演奏してくれた。
J.S.バッハ:無伴奏フルートのためのパルティータ BWV1013第3楽章サラバンド。
悠々と吹いてらして、こちらがメインのように思った。

アントニオ・マルコトゥッリオ、レスピーギ、ショスタコーヴィチ、バルトーク

さて、休憩後の後半。
《広島・長崎被爆80周年に捧げる新作》The Two Flowers(二輪の花)
素晴らしい。
第1チェロが同じ人か、と疑うくらい深みとコクのある音だ。
低音部が安定して全体をまとめてよい音だ。
初めての曲でテーマが鎮魂ということで、気構えたが、曲としてとても素敵な曲であった。
冒頭ヴァイオリンが笙のような音色を小刻みに奏で、ヴィオラが旋律をとる。このヴィオラが柔らかくはっきりとしたよい音で、今日はこれが聴けてよかった。
前半チェンバロをひかれた方がピアノに移り、人が変わったかのような魂の入った演奏であった。
厳かばかりでなく、とりやすいメロディーと変化のあるリズムで未来を見るような新しい鎮魂歌を聴けたと思った。

この曲はイ・ムジチが平和への願いを込めて、広島・長崎被爆80年のための新作を世界から募集して、団員の審査により選ばれた曲ということだ。
作曲のアントニオ・マルコトゥッリオさんが客席にいらした。
曲終わりの拍手で紹介され、さらに拍手の渦。
作曲者がいらしたからみなさん本気出したのかしら、と思うほどのギアチェンジぶりの演奏であった。

レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲
最高!
レスピーギの真綿のようなふんわりと美しいメロディー。
これを、第1ヴァイオリン3、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1の11の弦が完全に溶け合って繊細な音のミストに包まれたような幸せ空間をつくってくれた。

レスピーギ:リュートのための古風な舞曲とアリア 第3組曲1楽章始め
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演奏:ドラティ指揮 フィルハーモニア・フンガリカ 1958年4月録音

ショスタコーヴィチ:5つの小品
ショスタコーヴィチ、飽きるかなと予感を持っていたが、まったくそれはなかった。
5つそれぞれの表情を息の合った緩急で聴けてショスタコーヴィチってこんなにかわいらしい曲を作っていたの?と思った。

バルトーク:ルーマニア民俗舞曲
とても楽しみにしていた曲。いい。
コンマスの音色がここで完全に生きていて、東欧のちょっと重いのだけれど熱い舞曲が盛り上がった。

アンコールをなんと3曲やってくれた。

蓮池美侑:INORI-beyond silence
ヴィヴァルディ:弦楽のための協奏曲イ長調RV158第1楽章
山田耕筰:赤とんぼ
赤とんぼが、弦楽団用の編曲でしみた。
満席の会場から大拍手が続いた。

一体、前半のグダグダはなんだったのだろうか。
きっと、イ・ムジチの方々はヴィヴァルディを弾きすぎて逆に体が動かないヴィヴァルディの呪いにかかってしまったのかも、イ・ムジチを聴くときはバロック以外を聴こう、と自分を納得させ帰宅した。

※アイキャッチ写真は武蔵野市民文化会館ウェブサイトより

2025年9月18日 武蔵野市民文化会館大ホール

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