ウィーン チェロ・アンサンブル5+1に行ってきた。
■第1部
バッハ 管弦楽組曲第2番より第7曲「バディネリ」
サン・サーンス チェロ協奏曲第1番より1楽章
ボルヌ ビゼーの「カルメン」による華麗な幻想曲
ショスタコーヴィチ バレエ組曲『黄金時代』よりアダージョ
チャイコフスキー ロココの主題による変奏曲
■第2部
バッヘルベル カノンとジーグ、ハチャトゥリアン バレエ音楽「ガイーヌ」第3幕 剣の舞
ドビュッシー シランクス
J.シュトラウス2世 ポルカ・フランセーズ「クラップフェンの森で」
J.シュトラウス1世 ギャロップ「ため息」
モーツアルト 歌劇『魔笛』第1幕アリア「なんと美しい絵姿」
J.シュトラウス2世 喜歌劇『こうもり』より第2幕 チャルダーシュ
ガルデル タンゴ「ポル・ウナ・カベサ」
レハール 喜劇『ほほえみの国』第2幕君は我が心のすべて
クライスラー 愛の喜び
クレズマーより「ヨッセル」
ウィーンフィルの現・元メンバー、ウィーン室内管弦楽団メンバーなどのチェロ奏者5人とフルーティスト1人のアンサンブルだ。
コンセプトは「音楽史上に残る名曲を完璧な演奏技術で聴くだけではなく、コンサートを存分に楽しんで、いい気分で家路についてほしい」とのこと。
なので、たくさんの名曲のさらにおいしいところがつぎつぎに繰り出されるバラエティー感にとんだ構成だ。
第1部 華麗なるチェロの個性
最初は、バッハ:管弦楽組曲第2番より第7曲「バディネリ」。
フルートを聴かせる曲であり、フルートがメインなのはもちろんよいのだが、チェロ5重奏を聴こうと意気込んでいる身にとっては、チェロがバックになりきっていてちょっと物足りない。
フルートは遠慮気味なのかバランスを探っているような雰囲気にとれた。
「カルメン」による華麗な幻想曲は高音は澄んで装飾的な音の技術が見事、一方中低音は厚みがないように感じた。
5重奏ではなくて、それぞれの方をフューチャーした演奏が聴けた。
演奏ごとに椅子・譜面台をご自分たちで動かして、長く間をおかずに展開してくれるのでこちらも集中がきれないでいられる。
チェロはほんとうに一人ひとり音色が違う。
サウンド自体も弾き方も個性が強くある。
サン・サーンス:チェロ協奏曲第1番より1楽章を独奏したフローリアン・エックナーさんは、ダンディ。
悠々と深みのある音でしかも疾走する。
チャイコフスキー ロココの主題による変奏曲はベルンハルト・直樹・ヘーデンボルクとセバスティアン・ブルーの独奏。
待ってました! 日本が誇るわれらの直樹!!
wienerphilharmonikerウェブサイトより
直樹さんのチェロは安定感抜群できれいな品格のあるとてもよい音。
ブルーさんは36歳と若く、艶のある響きにエネルギーがみなぎっている。
チェロ協奏曲をオーケストラなしの2体のチェロで奏でる。
安定した直樹さんのメロディーと多彩に弾きわけ並走するブルーの融合が見事。
最後のお二人の掛け合いが躍動感あふれかっこよく、ジャズのソロのようだ。
個性が立っているお二人の演奏は迫力十分でたっぷり聴けて大満足。
第2部 お笑い劇場
第2部はコメディータッチの寸劇の趣向。
そこに美女1人がやってくる。
男性たちの猛烈アプローチが繰り広げられる。
さて、結末は?
という展開を口でなくてチェロが曲でおしゃべりするという高級学芸会状態。
遅刻して登場しかきみだす人あり、フルートに呼応しておもちゃの”ポッポ笛”や”ピロピロ笛”を吹いて気を引こうとする人あり。
笛を吹いて舞台袖からご登場するのが80歳のゲルハルト・カウフマンさん。ミスタービーン張りのおどけっぷりでとっても楽しい。
さまざま小芝居がはいりみなさんなかなかの役者でした。
左から。カリン・ボネッリ Karin BONELLI、セバスティアン・ブルー Sebastian BRU、フローリアン・エックナー Florian EGGNER、ベルンハルト直樹ヘーデンボルク Bernhard Naoki HEDENBORG、ミラン・カラノヴィチ Milan KARANOVIC、ゲルハルト・カウフマン Gerhard KAUFMANN。画像はFlorian EGGNERのfacebookより。
アプローチの場面でカウフマンさんがカリンさんをダンスに誘うのだが、コミカルながらもいささか密着度が高くセクハラっぽいのではとちょっと焦った。
ドビュッシー シランクスはフルーティストのカリン・ボネッリさんの独奏。
これは素晴らしかった。
1部は不完全燃焼ぎみだったように思ったが、2部では突き抜ける美しさが伸び伸びと広がってきた。
サイン会でのカリンさん
チェロもここでは5重奏で期待していたミルフィーユなハーモニーを聴くことができた。
アンコールは。
ウィーン チェロ・アンサンブルのお家芸。
1本のチェロを4人でよってたかって弾くボレロ。
YouTubeでの再生回数は143万回。
ホンモノを目の前で見てしまった。直樹さんが前、エックナーさんが後ろの二人羽織弾きは演奏を超えた演芸だ。
この演奏の生みの親はカウフマンさんだそう。
直樹さんは日本語で説明してくれるし、「ウィーン」の方々をちょっと身近に感じることができたのもうれしい。
ミラン(左)さん、ブルーさん。素敵すぎ。
今日の1曲はチャイコフスキー ロココの主題による変奏曲。
直樹&ブルーお二人の掛け合いがかっこよかった最後のところ。
演奏は(チェロ)レナード・ローズ:ジョージ・セル指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック 1952年録音
(2023年5月7日 武蔵野市民文化会館)