ウィーン・プレミアム・コンサートに行ってきた。
曲目は
J.S.バッハ 管弦楽組曲 第2番
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3番
J.S.バッハ オーボエとヴァイオリンのための協奏曲
ベートーヴェン 交響曲 第5番「運命」
前半 バッハ-ベートーベン
後半 バッハ-ベートーベン
という大御所セットだ。
バッハ シン・バロックを聴いた
管弦楽団は、多くがウィーンフィル、ウィーン国立歌劇場のメンバーで、ほか”助っ人”にウィーン交響楽団、そしてベルリンフィルからも複数人ずつが加わった編成だ。
少人数編成で、バッハは19人、ベートーベンは30人程度という体制。
J.S.バッハ:管弦楽組曲 第2番の出だしで”二度見”ならぬ”二度聴き”した。
ソフトなソフト音なのだ。
うすーい砂糖細工に色彩をつけているような、透きとおった洗練されつくした音色。
バロックは「ジャカジャカ」一本調子なイメージがあったが、まったく異なる世界だ。
貴族が眠りにつく前にベッド横で演奏するとしたらこんな感じかな、と思わせる音量で、耳を凝らせば凝らすほどに一つ一つの音が立っている。
その音が響き合うと妖精のささやきのようだ。
この曲はフルート協奏曲的にフルートが主役をはる。
フルート奏者はエルヴィン・クランバウアー、ウィーン交響楽団のソロ・フルーティスト。
とても繊細でなめらかだ。
有名な聴かせどころは、第5曲と第7曲。
フォルテは力強くしない。ピアノをミニマムにすることで大きく聴かせる、強弱の波がふわりふわりとふくらんでくる。
微妙にいそぎめなテンポが躍動感を感じる。
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲
オーボエとヴァイオリンがダブルソロの競演だ。
オーボエはベルンハルト・ハインリヒス、チューリッヒ歌劇場管弦楽団ソロ・オーボエ。
ヴァイオリンはフォルクハルト・シュトイデ、ウィーンフィルのコンサートマスター!
オーボエがヴァイオリンの運びと速さにスムーズに絡み合い、飾らないのに変化に富んでいる。
小菅優さんのベートーベン協奏曲第第3番
今日の小菅さんは明解で軽やかだ。
こんこんと湧きいずる泉のごとく、勢いがとまらず時にキラっと強弱が入ってきて曲に活力が溢れる。
第3番はハ短調で、陰影のあるイメージがあったが、小菅さんにかかるとみずみずしく明るい。
とても素敵。
ベートーベン交響曲第5番”弦楽合奏団版”
これはすごい。
「弦の弦による弦のための第5」といえる。
第5といえば「ジャジャジャジャーン」がどれだけインパクトがあるのかを楽しみにし、そして指揮者も演奏家もお約束に答えてくれる、それが第5だと思っていた。
今回小編成でどんなふうにスケール感を出してくるのかなと思っていたら、大違い。
「ジャジャジャジャーン」からして弦の最高の響き最優先の演奏だ。
まず今回の演奏は全体指揮者を置いていない。
コンサートマスターが司令塔なのだ。
派手に鳴らす演奏に慣れているけれど「第5はほんとうは弦がこんなにきれいなのだよ」と披露してくれているようで、耳をすませるときれいなヴァイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスそれぞれのパートの動きがくっきりと聴こえてくる。
特に第2楽章は弦楽団用の曲か!というくらいたっぷりと第5の弦の美しさがよくわかった。
管楽器は遠慮気味。
今回、はじめてリアル・ウィンナホルンを見たが、せっかくのウィンナホルンもちょっと悪目立ちに感じるほどだ。
そういった意味ではバランスはよくなかったかもしれない。
第5で好きなところが、3楽章から4楽章に入るところだが、これも素晴らしかった。
ティンパニーが静かにゆっっくりと時を刻んで、弦も焦らず丁寧に合流し、そして。
最後の盛り上がり。ここはバーンとやってくれました。
こうくるのかと、あなうれし。
アンコールはウィンナワルツ
おもしろかったのが、アンコールの曲。
アンコール曲を観客が選べるのだ。
まず、2曲を1フレーズ演奏してくれて、拍手の量でどちらか決まるという方式。
結果、アンコール曲となったのは「J. シュトラウスⅡ世:ポルカ・シュネル『あれかこれか』」
チャチャッチャーの本物はこんなに楽しいのかと。
これがウィーンの音と響きというものかと。
キラキラだけをすくって入れた宝石箱のようなウィーンフィル。
世界の人々がニューイヤーコンサートに魅せられている理由がよくわかった。
今日の曲は
J.S.バッハ 管弦楽組曲 第2番より(演奏はヘルマン・シェルヘン指揮 イングリッシュ・バロック管弦楽団 1954年9月録音)
写真はTOYOTA ウィーン・プレミアム・コンサートウェブサイトより
(2023年4月16日 サントリーホール)