オペラです。
オペラは「やたらと豪華な舞台で繰り広げられる外国語で知識と教養溢れるハイソサエティな芸術」の印象をぼんやりともっていました。
ですが、最近は日本語字幕のあるDVDがわりあいと安価で手に入り、それを観てわかったことは。
話の筋たわいもなーーい、ということです。
あらすじをいうと1分で足りるといったひねりのない、しかも案外と下世話なお話を、美しい声で煌びやかな衣装でとうとうと2時間以上かかって歌いあげているのです。
つまり、やはりなにがメインかというと、歌手の歌につきるわけです。
歌手の方がどのような声でどのように歌うのか、それには当然楽しく美しい曲があってのことですし、オーケストラの演奏も両輪です。
とはいえ、筋が分からないと歌もわかりませんから、3分以内で椿姫の話をざっくりまとめますと次のとおりです。
「椿姫」ってなんだ。
まず事前情報
「椿姫」の原作は「三銃士」 「モンテ・クリスト伯」 でおなじみのアレクサンドル・デュマ・ペールの私生児アレクサンドル・デュマ・フィスが書いた「椿をもつ女」。
実在した高級娼婦がモデルとなっています。
モデルとなった高級娼婦は、お針子から娼婦に転身して特に美貌にすぐれ、文学・美術・音楽などの教養をもち、数々のパトロンを虜にしたという伝説的な女性だといいます。
オペラでのタイトルは「道にはずれた女」。
娼婦という道にはずれた女性の物語を意味しています。
あらすじ
舞台は1840年のフランス。
貴族の社交界でのお話です。
主人公は高級娼婦のヴィオレッタ。ヴィオレッタに青年アルフレードが恋する。アルフレードの押しにより純愛は成就する。
しかし、アルフレードの父親が財産狙いでは?と疑い、家柄にふさわしくないとして二人を引き裂く。
だが後日、父親は財産を使い果たしていたのはヴィオレッタの方だったと知り、また二人の愛の強さを理解し、二人の結婚を認める。
でも時は遅かった。結核に侵されていたヴィオレッタはひと時の喜びを味わいながらも亡くなってしまう。
という悲劇のお話です。
1840年のフランスというと、1789年のフランス革命の後復活した貴族優先の政治にたいし、市民が再び蜂起し王を追放した7月革命(1830年)の10年後です。
1848年貴族の特権が廃止される時代で、舞台となっている社交界は、新興の貴族とブルジョアで構成されたものだということです。
トリエステ・ヴェルディ歌劇場
ヴィオレッタはヌッチオ
さて、トリエステ・ヴェルディ歌劇場が来日しています。
ヴェルディ作曲「椿姫」のメインはとにかくヴィオレッタ。ヴィオレッタのソプラノにつきます。
一人で歌いまくります。もちろんアルフレードのテノール、父のバリトンも聴きどころ満載ですが、とにかくソプラノ一人のためにすべてが用意されているといって過言ではありません。
今回演じたのは、ジェシカ・ヌッチオ。
1985年イタリアのシチリア島生まれ。34歳。
幸せを歌う場面のたっぷりとした芳醇さと、悩みや悲嘆のなかでの鋭く伸びやかな高音が素晴らしい。
そして超高音・高速のコロラトゥーラ。
音一つ一つが立って転がっていて、本物だーー、という感じですごい。
とにかく声の”圧”が押し寄せてきます。
人間一人の声帯の振動がビンビンと直接届くのは、やはり公演ならではの魅力です。
カーテンコールでは、弾みながら袖から出てきて大きく投げキスをしてくれる、そのヤンチャなギャップも楽しませてくれました。
「乾杯の歌」
「椿姫」はヴェルディ作曲ですが、曲だけで有名なのが「乾杯の歌」です。
これ、わりと最初の方の場面、ヴィオレッタ主催のパーティーに参加しているアルフレードが、乾杯の音頭をとる時の歌です。
この後ヴィオレッタへを口説き始める、一番煌びやかで明るく盛り上がる場面です。
オーケストラ
オーケストラピットも見ものでした。
普段の客席前方10列くらいまでのスペースを椅子を取り外してピットにしてあって、そこで楽団員の方々が演奏していました。
おもしろかったのは、そこが開演前や休憩時間もそこが居場所となっているようで皆さんリラックスしておしゃべりしたり、少し音を出したり、スマホで客席を動画撮影していたり、はたまた読書に励んでいたりなど、楽屋ってこんなふうなのかなという様子を見ることができたのです。
バレエ!
2幕には2場あって、2場の初めは仮装パーティーの場面。
ここでジプシー女、マタドールがそれぞれ楽しい曲で演舞するのが見どこの一つですが、マタドールの踊りでペアのバレエダンサーが登場、これが若々しくてイキがよくかわいらしいく、魅了されました。
総監督 アントニオ・タスカ
総監督のアントニオ・タスカさんは日本へのサービスを意識されているとのことで、facebookで日本語で情報を発信していらっしゃいます。
一番左がタスカさん。
ヌッチオ最高の夜でした。
今日の一曲