ナポレオンの馬の絵の肖像「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」5バージョン全解説

「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」が描かれた理由

ナポレオンの肖像として有名な絵画はジャック=ルイ・ダヴィッド作の「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」です。

この有名な「ヒヒ~ン」の肖像画は、ナポレオンがヨーロッパ征服に乗り出す初期の1800年に北イタリアに向かうナポレオンを描いたものです。

北イタリアは、ナポレオン軍とハプスブルク(オーストリア)が取った取られたを繰り返した土地で、1800年はナポレオン軍が取り返すことに成功した年です。
この時、ナポレオンは敵の意表をついてアルプスを越えて侵入するという「アルプス越え」作戦を決行し成功しました。
この肖像画はその作戦を讃え「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」と題されています。

描いたのは、画家のジャック=ルイ・ダヴィッドです。
描かせたのはスペイン王カルロス4世です。
ナポレオンのイタリア征服によってスペインはナポレオンと和睦しそのプレゼントとして進呈したのです。

5枚の「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」

「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」は5枚存在しています。

ナポレオンがスペイン王カルロス4世にプラス3枚リクエストしたのです。
他にダヴィッドが自分保存用に1枚、全部で5枚描かれて、それぞれ現存しています。

当時 現在
原画 マルメゾン城の美術館(フランス)
サン・クルー城(フランス) シャルロッテンブルク宮殿(ドイツ・ベルリン)
アンヴァリッド(フランス) ヴェルサイユ宮殿(フランス)
チザルピーナ王宮(イタリア・ミラノ) ベルヴェデーレ宮殿(オーストリア・ウィーン)
ダヴィッド保管 ヴェルサイユ宮殿(フランス)

ナポレオン比べ

では、実際の画をみてみましょう。

①マルメゾン城

②シャルロッテンブルク宮殿

③ヴェルサイユ宮殿-1

④ベルヴェデーレ宮殿

⑤ヴェルサイユ宮殿-2


やはりイケメン度でいうと③ヴェルサイユ宮殿-1でしょう。
ジャニーズで例えると
③「ヴェルサイユ宮殿-1」がV6(解散してしまった!)のカミセン(岡田君ら年少組)。目がぱっちりしています。
④「ベルヴェデーレ宮殿」がトニセン(長野君ら年長組)。正統派イケメンですがちょっと愁いもある。
①「マルメゾン城の美術館」がジュニア。
⑤「ヴェルサイユ宮殿-2」は雰囲気が違いますが、ダヴィッド自分保管用ということでリアルなのかもしれません。
②「シャルロッテンブルク宮殿」は暗くてつぶれてしまっています。

馬でいうと。
③「ヴェルサイユ宮殿-1」がきれいな白馬。
②「シャルロッテンブルク宮殿」だけが全体茶です。
④「ベルヴェデーレ宮殿」は③とほぼ同じですが全体の色調が暗くされています。
①「マルメゾン城の美術館」は前足が白1色です(③、④は白と黒)
⑤「ヴェルサイユ宮殿-2」は口と目がほかと違いびっくりしていません。

以上のことより、ジャック=ルイ・ダヴィッド作「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト」ベスト1は

③「ヴェルサイユ宮殿-1」バージョンに決定したいとおもいます。

書き込まれた文字の謎

手前側の石に文字が書き込まれています。


「BONAPARTE」「HANNIBAL」「KAROLVS MAGNVS IMP」
「ボナパルト」「ハンニバル」「カール大帝」

「ボナパルト」はナポレオン・ボナパルト。
「ハンニバル」はローマ時代のローマ軍最強の敵カルタゴの将軍。ナポレオンが越えているアルプスのサン・ベルナール峠を越えてイタリアに侵入した「元祖アルプス越え」。
「カール大帝」は初代神聖ローマ皇帝で、やはりサン・ベルナール峠を越えてイタリアに侵攻したといわれます。
“ナポレオンは、歴史的軍人ハンニバル、カール大帝と並び称される偉人である”とヨイショしているわけです。


1800年、ベートーベンは交響曲第1番を作っています。

play_circle_filled
pause_circle_filled
ベートーベン作曲交響曲第1番
volume_down
volume_up
volume_off

関連記事

  1. チャイコフスキーはモスクワ音楽院の理論担当教師

  2. ベートーベン 「ハイリゲンシュタットの遺書」

  3. モーツアルトと父レオポルト

  4. ムソルグスキー作曲『展覧会の絵』の「キエフの大門」はウクライナの元祖キエフ・ルーシ国王が建設した。

  5. 読売日本交響楽団の第9

  6. ウィーンが「音楽の都」の理由。それはハプスブルク帝国の首都にあり。

  1. ベートーベン交響曲第3番『英雄』表紙。「ボナパルト」が消された!

  2. モーツアルトのオペラ「魔笛」はフリーメイソンのための曲

  3. 【新説!】ベートーベン交響曲第3番「ボナパルト」から「英雄」に変…

  4. ベートーベン交響曲第1番のパトロンは

  5. チャイコフスキーの妻

  6. モーツアルトと父レオポルト

  7. チャイコフスキーの死因

  8. モーツアルト死の謎。わかっていること。いないこと。

  9. 小林秀雄のモーツアルト評「モオツァルトのかなしさは疾走する。涙…

  10. チャイコフスキーはモスクワ音楽院の理論担当教師

  1. モーツアルトの生まれたザルツブルクは「ザルツブルク市街の歴史地…

  2. ボロディン作曲『韃靼人(だったんじん)の踊り』もウクライナ由来。

  3. チャイコフスキー交響曲1番 「冬の日の幻想」さび

  4. ナポレオンの馬の絵の肖像「サン・ベルナール峠を越えるボナパルト…

  5. モーツアルト交響曲第36番の「リンツ」38番の「プラハ」はハプスブ…

  6. ムソルグスキー作曲『展覧会の絵』の「キエフの大門」はウクライナ…

  7. 「フィンランディア」ロシアからの独立への決意の曲

  8. ベートーベン作品とパトロン一覧【カテゴリー別、パトロン別に見ら…

  9. モーツアルト、ベートーベンをビッグにした「ハプスブルク帝国」と…

  10. ウィーンが「音楽の都」の理由。それはハプスブルク帝国の首都にあ…