ヴァイオリニストの樫本大進とピアニストのエリック・ル・サージュのデュオ・リサイタルが行われた。
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第1番
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番
シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番
アナザー・ダイシン
ベルリンフィル第1コンサートマスター 樫本大進
これまで、樫本大進のつやッつやでキュルルンの音色に魅了されてきたが、今回はまた違った「アナザー・ダイシン」を聴いた。
あえての”つや消しマットコート”の音色だ。
シューマンは、厚みのある憂いをおびた響き。
音どおしがなめらかに繋がり、弦から放たれる波長が脳内に満たされるような感じだ。
ブラームスは、切ない。
エリックのピアノはポロンポロンと弦と呼応しながら、時に燃料チャージするかのようにヴァイオリンを煽り、やるせなくも情熱ほとばしる響きがわきあがる。
エリック・ル・サージュ
“つや消し”のなかにも艶やかで澄んだ音がところどころ顔をのぞかせ”差し色”ならぬ”差し音”がキラっとする。
明るい高音と泣ける高い音がはっきりと違い、同じ楽器でこんなにも表情を変えて演奏されるのかと驚きだ。
樫本さんとエリックさんは息遣いがピッタリで、間、速度、強弱がまさにシンクロして一つの生命体のようだった。
すべての音が全部綺麗。
痺れる演奏であった。
サイン会
なんと、サイン会をしてくださった。
サントリーホールのお客さん、希望者ということで制限はない。
いったい何時間かかったのだろうか。
演奏以上に手が疲れてしまったのではと心配であるが、ご本人から直接サインをいただくということは、ファンにとってこのうえない僥倖だ。
後ろに並んでいた2人の大学オーケストラの構成員らしき男女は「一生自慢する」と興奮して話ていた。
声には出さないが、自分も含め並んだ全員がそう思っていたと思う。
樫本大進さん、エリックさん、本当にありがとうございました。
写真はパンフレットより
(2023年2月3日 サントリーホール)