ベートーベン作曲「レオノーレ」第1番、第2番、第3番。「フィデリオ」序曲。1つのオペラに4つの序曲の謎。

「フィデリオ」序曲、「レオノーレ」第1番、第2番、第3番はそれぞれ違う曲

ベートーベン作曲の序曲に「レオノーレ」第1番、第2番、第3番があります。
いずれもオペラ『フィデリオ』の序曲です。
1つのお芝居に序曲は1つですが、『フィデリオ』には3種類あることになります。
しかも創作順でいうと、第2番、第3番、第1番の順です。

しかも。さらにもう1つ「フィデリオ」序曲があります。
なぜ1つのオペラに序曲が4つもありごちゃごちゃしているのでしょうか。
その理由をまとめます。

そもそもオペラ『フィデリオ』のタイトルももともとは『レオノーレ』でした。

オペラ『フィデリオ』の原作はフランスの実話をもとに、ジャン・ニコラス・ブイイが執筆した物語『レオノーレ、または夫婦愛』です。
この主人公の名前がスペインの女性レオノーレです。
レオノーレは不当に監禁されている夫を男装して救い出します。
男装した時の名前がフィデリオです。
レオノーレとフィデリオは同一人物です。

オペラのタイトルも序曲も「レオノーレ」だったり「フィデリオ」だったりややこしいです。
レオノーレが活躍するのだから「レオノーレ」でいいんでない? と思いますが、これにはわけがあるのです。
理由はシンプルで、すでに他の人が「レオノーレ」を演じてしまっていて、劇場がこれと混同しないように男装の方の名前「フィデリオ」を使いたかったからだといわれています。
ですが、ベートーベンは「レオノーレ」にこだわっていて曲名は「レオノーレ」としていて当時からフクザツだったようです。

『レオノーレ』は興行的に不評で手を加えていったようです。
変遷は次のとおりです。

初演年 オペラ台本 序曲
1805 第1稿 「レオノーレ」序曲第2番(作品 72a) 不評
1806 第2稿 「レオノーレ」序曲第3番(作品 72b) 不評
1807 「レオノーレ」序曲第1番(作品 138) 序曲だけ書き直し。ベートーベンの生前演奏されず。
1814 第3稿 「フィデリオ」序曲(作品 72c) 大成功

1814年にはさすがのベートーベンも『フィデリオ』で妥協、これは大成功を収めました。

1814年の『フィデリオ』のチラシ

それぞれ全曲聴けます。

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「レオノーレ」序曲第2番(作品 72a)
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「レオノーレ」序曲第3番(作品 72b)
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「レオノーレ」序曲第1番(作品 138)
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「フィデリオ」序曲(作品 72c)
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やっぱり期待感が盛り上がるのは『フィデリオ』ですね!

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