ベルリン交響楽団のコンサートに行ってきた。
曲目は
モーツァルト: 歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト: オーボエ協奏曲 ハ長調
ベートーヴェン: 交響曲 第5番「運命」
指揮はハンスイェルク・シェレンベルガー
元ベルリン・フィル首席オーボエ奏者。カラヤン時代のスーパーエース。
ベルリンの壁で誕生したベルリン交響楽団
ベルリン交響楽団は、BERLINER SYMPHONIKER で、
ベルリン・フィル BERLINBERLINER PHILHARMONIKER とは別のオーケストラだ。
ベルリンの壁以前、西ドイツには
・ベルリン・シンフォニー・オーケストラと
・ドイツ・シンフォニー・オーケストラ
が存在していた。
これらの楽団に東ドイツの住人も普通に通っていた。
ところが、東ドイツから西ドイツに移り住む人が多くなり、東ドイツはそれを阻止するためにベルリンの壁を作った。
これにより東側の人は西側へ働きに行くことができなくなった。
「人数が減っちゃった」ということで、「ベルリン」と「ドイツ」が合併して、ベルリン交響楽団が結成されたということだ。
ベルリンの壁が築かれたのが1961年、結成されたのが1966年ということで、合併に5年かかっていることがわかる。
壁は当分取り壊されることはない、と人々が新たなスタートに心を決めるまでの年数だったのかと想像する。
ハンスイェルク・シェレンベルガーの指揮とソロ!
「質実剛健」。まずはの印象だ。
歌劇「フィガロの結婚」序曲の冒頭の小さく速く弾んで、躍動に変わる瞬間が聴きどころであるが、案外あっさりだ。
ジャーマンポテトにザワークラウト、そしてソーセージ、それぞれが素朴においしいことが基本、といった味付けだ。
モーツァルト: オーボエ協奏曲 ハ長調。
生ハンスイェルク・シェレンベルガーのオーボエでモーツアルトが聴けるとは!
しかも”吹き振り”。なんという幸運なのでしょう。
フィガロが終わってすぐに袖に入ると、裏で「ピロピロピロー」と1回だけ音出しが聴こえ、すぐにオーボエを手に再登場。
かっこいい。
指揮はオーボエを持ちながら案外と丁寧に全体を指揮している。
ソロを吹きながらなので、体は客席を向いていて、正面から指揮をしている姿が拝見できるというなかなかないシチュエーションだ。
音は。繊細で滑らか。音圧は感じさせず高音は透き通るよう。
速弾きのところはスムーズで「オーボエと身体が一致しているんだな」と感じさせられた。
流れの表情はあまりつかずにおとなし気であった。
2楽章からはウォーミングアップが充実したのか、いっそう輝きが感じられた。
ヴァイオリンの伴奏が単調なところがあったかな。
ベートーベン第5番。「ジャジャジャジャーン」の後が短い短い。
もしかして、プレーヤー時代、指揮者が”盛って”くるのに飽き飽きしていたのかなと想像するほど。
ホルンがうなるところは、好きな音でうれしい。
そして、フルートが大注目だ。2楽章のソロがとてもいい。ニュアンスをつけながらキレの良い音色をおもいっきり出している。ピッコロもまたいい。
注目の3-4楽章のつなぎ部分は”なにかの予感”的音空間を期待したいところだが、そこまでのメリハリはつけていないようであった。
プログラムを見ると、この方々は6月14日の神奈川から始まって東京、愛知、大阪、福岡、岡山、広島、山口、札幌、東京、越谷、7月2日の静岡というハードなツアーを回っていらっしゃる。
そのうち、ベートーベン第5は必ず演目に入っているので、12回は日本で「ジャジャジャジャーン」とやっていらっしゃるということ。
プロフェッショナルとはいえ過酷かもしれないが、一般人には大変ありがたい。
庶民の味方ベルリン交響楽団万歳!
アンコール そしてサイン会も開催
シェレンベルガーさんは、オーボエ協奏曲の後、アンコールをしてくださった。
ブリテン : オヴィディウスによる6つのメタモルフォーゼ Op.49 No.5 Narcissus
そして最後は、なんと2曲。
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番、第5番
正直、こちらのノリがよかったかなと。
民族的なパッションでヤンチャにいくプログラムも今度聴いてみたい。
今日の曲は2曲。
モーツアルト:オーボエ協奏曲 ハ長調
(Ob)レオン・グーセンズ:コリン・デイヴィス指揮 シンフォニア・オブ・ロンドン 1960年3月29日録音
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮 北ドイツ放送交響楽団 1954年5月18日~20日録音
そして、シェレンベルガーさんはサイン会も開催してくださいました。
なんという体力、なんという音楽への献身。
写真は購入パンフレットより
(2023年6月29日 武蔵野市民文化会館)