ゲルギエフをミュンヘンフィルは契約解除してはいけなかった2つの理由

ミュンヘン・フィルハーモニーがゲルギエフの契約を解除

ロシアを代表する指揮者ワレリー・ゲルギエフ(Valery Gergiev)がドイツのミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者を解任されました。
2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻したことを受け、ミュンヘン市長が「プーチンを批判して欲しい」と要望したことにたいし返答しなかったことが理由とされています。

ゲルギエフはこれまでの行動からプーチンと近い「盟友」であると見られていました。そこに、今回の沈黙ということで、ウクライナへの侵攻も支持していると受け取られ西側諸国から拒否されたわけです。

戦争犯罪者(の仲間)の活動に国の税金を使えないという理屈のようです。
また、ロシアにたいして西側諸国を中心に経済制裁を発動していてロシアの収入になることは止めなければいけないこともあるとは思います。

ですが、契約解除はやりすぎだと考えます。

契約解除がやりすぎだと考える2つの理由

1 指揮者が仕事である

ゲルギエフは指揮者です。
ロシア皇帝エカチェリーナ2世が設立した帝国劇場「マリインスキー劇場」の芸術監督に35歳で抜擢されました。
帝国劇場ですから、共産党幹部とのつきあいが生まれるのは必然です。

抜擢されたのは1988年、ソ連の指導者はペレストロイカを推し進めているゴルバチョフ書記長です。
そして3年後の1991年、ゴルバチョフ書記長を倒すクーデター未遂事件が発生します。
この時のことが小林和男著『希望を振る指揮者』に記されています。

アメリカのプロモーターがゲルギエフに「危険だからすぐにアメリカへの亡命の準備をしろ」と電話すると、ゲルギエフは「私には家族がある。ロシアには母も姉妹もいるアメリカには行かないし、亡命もしない」「私にはマリインスキー劇場がある」と。

ゴルバチョフ政権の時はゴルバチョフが失脚すると危険だといわれるほど、ゴルバチョフ側の人間として見られていたことがわかります。

つまり、プーチンだから親密なのではなく、責務として時の政権とうまくやる必要があるからそうしていただけ、ということなのです。
ロシアという国です。ショスタコーヴィチがスターリンの弾圧の恐怖と戦いながら作曲した時代から50年以上がたったとはいえ、現在の大統領はKGB出身の強権・冷酷さはこれまでも随所に見えています。
「政権批判」イコール「破滅」であることは簡単に想像できます。

家族を守る、劇場を守る、アーティストを守るという重責を考えると「わっかりましたー ちょっと言っときまーす」とはとてもいえないのは当たり前だと思うのです。

2.出身がオセチアである

オセチアはロシアとジョージアとの境界にまたがって存在する地域です。


もともと同じオセチア人が居住する地域なので、南オセチアは北オセチアとの統合をめざしてジョージアからの離脱を求め争っています。

オセチア―ジョージア―ロシアは”三角関係”にあり、プーチンとゲルギエフの関係にももちろん影響していると考えられます。

オセチア×ジョージア

1991年、南オセチアがジョージアからの独立を決議し武力闘争激化。南オセチアがロシアの支援をうけて勝利。
2008年、グルジア戦争勃発、フランスの仲介で休戦。

オセチアロシア

オセチアとロシアは、もともとロシア帝国の18-19世紀から、同じロシア正教を信仰している同士良好な関係をもっていた。
2008年、ロシアは、南オセチアの独立を承認。しかしこれは国際的には認められていない「未承認国家」。
ロシアは南オセチアを支援することで、反ロシアの姿勢を強めるジョージアにたいして牽制にもなる。

ジョージア×ロシア

ジョージアは、ソ連崩壊後独立した国家。
オセチアの他にも国内で民族紛争があり、介入するロシアへの反発を強めている。

つまり、対ジョージアに際してオセチアはロシアにたよらざるをえない状況にあります。
その点でもオセチア出身のゲルギエフはプーチンたいしても、非常に繊細な立ち居振る舞いが求められることは明らかです。

人間の尊厳がある

人はそれぞの国の事情に翻弄されながら生活していくしかありません。
表向き「ロシア国粋主義者」のように見られることがあっても、それには背景があるのだと思います。

ゲルギエフが市民の無差別殺傷に賛同しているわけがありません。

音楽を愛し精力的に世界のファンを楽しませてくれるゲルギエフへ敬意を保ちながら今はがまんする時であるとは思います。
戦争犯罪人プーチンのせいでゲルギエフ・マリインスキーが聴けなくなるなどということは、人類の損失です。

チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」全部

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チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」
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