エマニュエル・パユ来日
2年ぶりです。
ついにエマニュエル・パユが来日してくださいました。
緊急事態ではないものの、まだまだ新型コロナの水際対策措置が継続する中、実現しました。
同じ頃予定されていたオーケストラとの共演はキャンセルになったので、この公演も半信半疑でしたが中止の通知もなく、当日会場に到着したらポスターが掲げてあり「あぁ本当に演奏があるのだな」とようやく実感したのでした。
演奏は、エマニュエル・パユのフルートとバンジャマン・アラールのチェンバロのアンサンブル。
バッハです。
J.S.バッハ:無伴奏フリート・パルティータ イ短調 BWV1013
J.S.バッハ:フランス組曲 第6番 ホ長調 BWV817
J.S.バッハ:フルート・ソナタ ロ短調 BWV1030
J.S.バッハ:フルート・ソナタ ホ短調 BWV1034
J.S.バッハ:フルート・ソナタ ト短調 BWV1020
クープラン:『クラヴサン奏法』より 前奏曲 第5番 イ長調
J.S.バッハ:フルート・ソナタ イ長調 BWV1032
1曲目の1音。煌めきを聞き逃すまいと耳を澄ますと・・・。
あれ・・。という感じです。
パユ独特の1音で会場を支配してしまう響きがもう1つです。
「もしかして、バッハはこのように演奏するものなのかな、時代によってもあるでしょうし。チェンバロとのバランスもあるのかな」など思いながらいました。
低いビブラート部分はそうなのだとしても、どうも「ここは聴かせてー」というカ所もいつものたっぷりとした音の充満がなく、ちょっとぶれるのです。
そして、肩甲骨がぶわーっと膨らむような息継ぎも今日はなにやら苦しそうに見えました。
思い至ったのが、きっと検疫期間の影響でベストコンディションではないのかもということです。
そう考えると、不自由な環境下で強行してくれたことがますますありがたく思えます。
全体的には、同じバッハでも曲によって緩急、テンポ、強弱が華やかに変化し、ところどころ”差し色”のような装飾音も楽しく、明るいバロックで世界に引き込まれます。
アラールのチェンバロは淡々としかしフルートに並走し、よい意味で目立ちません。
「J.S.バッハ:フランス組曲 第6番 ホ長調 BWV817」と「クープラン:『クラヴサン奏法』より 前奏曲 第5番」はチェンバロの独奏です。
「クープラン前奏曲第5番」ではお二人で舞台に現れ「あれ?」と思っていたら、第5番で切らずに続けて「フルート・ソナタ イ長調」が演奏されたのが、プチサプライズでかっこよかった。
BWV1013で入ってBWV1032で終わる構成も、観客を楽しませようという意図があったのかなと思うとうれしいものです。
終わりは拍手喝采が鳴りやみませんでした。
何度も何度も出てきてくれて、なんと、アンコールまで演奏してくれました。
このアンコール曲がリラックスしてか軽やかに聞こえました。
会場では、CDが販売されていて購入者先着順にパユサイン入りのポストカードのプレゼントがあり、同じ曲が収録されている「EMMANUEL PAHUD・TREVOR PINNOCK JOHANN SEBASTIAN BACH」2枚組を購入。ポストカードも間に合いました。
サインペンで書かれた本物、ファンサービスにも感動でした。
苦しそうに聞こえた音はそうではなくそういった奏法なのかということも当然捨てきれず、帰宅してCDを聞いてみた。
やはり、音は伸び澄んでいた。
(2021年11月29日 所沢市民文化センター)