平和条約を結んでいなくても、文化交流には問題ありません。
ロシア国立交響楽団が来日しています。
ロシア国立交響楽団
ロシア国立交響楽団は1936年から活動を始め、1965年からエフゲニ―・スベトラーノフが音楽監督に就任してから実力をつけ「スヴェトラーノフ交響楽団」の別称で呼ばれるようにもなりました。
第1ヴァイオリンが14人の大所帯、チェロが(舞台向かって)右側に位置しています。
女性が多いです。
今回の指揮者はマリウス・ストラビンスキーです。
曲目は
・ストラビンスキー作曲、バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)。
・チャイコフスキー作曲、ピアノ協奏曲第1番。
ピアノ演奏はリリヤ・ジルベルシュタインさんという女性です。
・チャイコフスキー作曲、交響曲第5番。
の豪華3本立てです。
これは、かなりの長時間になるなと思っていたら、「火の鳥」(1919年版)というのはダイジェスト版なのですね。
20分ほどで、いいとこどりのナイスな構成でした。
「火の鳥」
出だしはたいへんたいへん小さな小さな弦から始まりますが、見事な揃いです。
全員が弾いているのになんて小さな音なのでしょうと、びっくりです。
ところが。
だんだんと盛り上がってフォルテになっていくあたりから、すっごい迫力です。
巨人がダンッダンッとあしぶみして迫ってくるような、硬く強い音が空気を貫いてくるような音圧です。
魔王カスチェイの凶悪な踊りのあたり(?)では、全パートが「我が我が」とおもいっきりの音を響かせそれでいて、歯車ががっちりかみ合って一体化しています。
特に見てしまったのはティンパニー。奏者はモンゴル相撲の選手のような体格で打ち方も戦場で「かかれーーー」という景気づけ太鼓かというくらいの遠慮のなさです。
さて、指揮者を見ると、体を乗り出すでもなく、汗をほとばしらせるでもなく、高い身長をまっすぐに伸ばして、シュッシュッと軽々と振っています。
このスマートさはいったい? と不思議に思ったら。
この方は10歳からロンドンに留学してなんと、イギリスの名門首相を何人も排出しているおぼっちゃま学校、イートン校で学んでいたということなのです。
年齢も若くて、30歳ちょっとくらいに見え”今年入った新入社員です。どうぞよろしく。”風の遠慮深い雰囲気で、とてもロシアの有象無象をまとめる人物には思えません。ところが、このシュッシュッで大楽団をピタリとまとめあげ、すごいです。
チャイコフスキーピアノ協奏曲第1番
この曲をナマで聴ける時がやってくるなんて。
本物だーーー、という興奮でピアノのリリヤに釘付けです。
普通の鍵盤のピアノから普通の10本の指で本当にあの音が生みだされていました。
2楽章あたりで少し、どろどろどろ・・・となっていたような気もしましたが、それもまた人間的で楽しいです。
当然全体のオーケストラは調和路線、ティンパニー奏者も別の方が担当していました。
ああ、こんな演奏が聴けて、大人になってよかったの1曲。
チャイコフスキー交響曲第5番
落としたサウンドからうねりの弦、そして冴えわたる金管と贅沢三昧のひと時。
ここで、貴重な場面を目撃しました。
ヴァイオリンの弦が切れて、後ろの人へ後ろの人へと交換していくあの状況が起こったのです。
1楽章で第1ヴァイオリンの2列目の人の弦が切れて、隣の人が後ろの人と交換してあげて、順々に最後列に周り、最後列のわりと年配の方が「あ、はいはい」とばかりに受け取って、そこからは工房のおじさんとなって丁寧に修繕していました。
これが結構時間がかかって5分くらい、その間そちらが気になって気になって見続けてしまいました。
最後はちゃんと耳の近くで弦をはじき音合わせまで終えて完了。
1楽章が終わったところで、2列目の人が後ろをちらりと見て、今度は後ろから前へ前へと送られ、2楽章以降は無事それぞれMyヴァイオリンに戻りました。
なんとも人間臭さが垣間見られ、ラッキーでした。
音の強さがきわだったロシア「~スキー」シリーズを堪能し、数日の間頭の中は音楽が充満していました。