ウィーン・リング・アンサンブル キュッヒルさんが強すぎた

ウィーン・リング・アンサンブル演奏会に行ってきた。

曲目は
ニコライ:オペレッタ『ウィンザーの陽気な女房たち』序曲
J. シュトラウスⅡ:ワルツ『南国のばら』
J. シュトラウスⅡ:オペレッタ『こうもり』よりカドリーユ
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・マズルカ『とんぼ』
レハール:ワルツ『金と銀』
J. シュトラウスⅡ:ポルカ・シュネル『狩り』
プッチーニ・メドレー
ヨーゼフ・シュトラウス:ワルツ『水彩画』
J. シュトラウスⅡ:ポルカ・シュネル『シャンパン・ポルカ』(音楽の冗談)
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ・シュネル『大急ぎで』
J. シュトラウスⅡ:オペレッタ『騎士パズマン』よりチャールダーシュ

キュッヒルさんの音が強い

ライナー・キュッヒルさんは、1950年生まれ。
2016年まで45年間ウィーンフィルのコンサートマスターを務められた偉大なヴァイオリニストだ。

ライナー・キュッヒル


当然第1ヴァイオリンを担当されたのだが。
音が強い。そして大きい。
ほかパートがかき消されてしまうほどだ。
ワルツもポルカも出だしもサビも一本調子の主役観がすごい。
周りと合わせることには注力せずひたすら全力で突っ走る感じだ。
コンサートマスターというのはそのように牽引していくものなのだろうか、あるいは、もう自分のヴァイオリン人生ここまできたら思いっきりやるぞ、という意気込みの表れなのか。
席が向かって右側でヴァイオリンの音が届きやすい場所だったからかもしれないが。

ウィーンフィルによるウィンナワルツということで、雲のじゅうたんにふわっと載せてくれるような音の空間を想像していったのだが、そうではなかった。

贅沢なことに楽団長で日本でもおなじみのダニエル・フロシャウアーさんが第2ヴァイオリンを務めている。

ダニエル・フロシャウアー


フロシャウアーさんとヴィオラのハインリヒ・コルさんがお2人で「ズ・チャッチャ ズ・チャッチャ」を献身的に奏でていて、それだけでも今日はよいものを聴かせていただいた、と思った。

一人気を吐くカール=ハインツ 五刀流

みなさんがキュッヒルさんとの調整をこころみているようななか、フルートのカール=ハインツ・シュッツさんが一人気を吐いていた。

カール=ハインツ・シュッツ


シュッツさんのフルートは健やかで光のようにどこまでも抜けていき、夢の国を自由自在に飛び回って奏でているようだ。
ニューイヤーがとんでもなく華やかになる。

シュッツさん、今回はフルートだけではない。
ピッコロはもちろん、なんとパーカッションパートも担当。
トライアングル、スネアドラム、小道具の拍子木的鳴り物など、後ろの椅子に楽器を置いて、曲に合わせて忙しく交換している。
驚いたのは、「狩り」の時に左手でフルートを吹きながら右手でトライアングルを鳴らすという活躍ぶり。
鉄砲の音は鳴りもので、最後はクラッカーを盛大に打ち上げて盛り上げてくれた。

ポルカ・シュネルに飛び道具

ポルカは楽しい曲だ。とくにテンポの速いポルカ・シュネルになると、この方々はなにかいたずらしなくては気がすまないらしい。
「狩り」ではシュッツさんの五刀流を聴かせ・見せてくれたが、ほかのみなさんも負けていない。
「シャンパン・ポルカ」では最後、シャンパンの蓋にみたててコルクをクラリネットのヨハン・ヒントラーさんが空気銃的にキュッヒルさんへ発射してみごとキャッチというコンビネーションの妙。

ヨハン・ヒントラー

「大急ぎで」では、クラリネットのアレックス・ラドシュテッターさんが風船を膨らませてちょうど最後に破裂するという”芸”も見せてくれた。

アレックス・ラドシュテッター


演奏ではないが、開幕前の会場アナウンスをなんとコントラバスのミヒャエル・ブラデラーさんがされた。「感染症対策にご協力を。ホールは耐震構造なので地震の際は落ち着いて係員に従って」というあれだ。「みなさん、ようこそおいでくださいました。心を込めて演奏します」と日本語で話され、とてもうれしい。

ミヒャエル・ブラデラー


みなさん、エンターテイナーですわ。

後半からのアンコールは「美しく青きドナウ」と「ラデツキー行進曲」!!

後半は、プッチーニ・メドレーで始まったが、このころから全体のバランスが整ってきたように聴いた。
予定外の弦楽四重奏(ヴァイオリン2、ヴィオラ1、コントラバス1)もあり、それぞれの弦の”味”に聴き入った。

フロシャウアーさんの音色はさすがによい。第1ヴァイオリンとヴィオラをつなぐ、まろみをおびた演奏だ。

アンコールは3曲演奏してくれた。
まずは、J.シュトラウスⅡ:ポルカ・シュネル「浮気心」。
さらなるポルカ・シュネルで得したような気になっていたところ。

こんどは、ヴァイオリンお2人が小さく小さく波の音を立て始めた。
「ええ? まさか??」と心臓の鼓動が高まったところ、本当にやってくれました。
J.シュトラウスⅡ「美しく青きドナウ」。
ウィーン・リング・アンサンブルはメンバーが12人の構成だが、締まったオーケストラといっても過言ではない。
本物を聴けた、しかもこのメンバーで、と思うと感激もひとしおだ。
ロナルド・ヤネシッツさんのウィンナホルンのポポポポーを生で聴け、この音は脳に深く刻んでおこうと思った。

ロナルド・ヤネシッツ


とてもすごくて大拍手をしていたら、まだ続きが。
カール=ハインツ・シュッツがタタタと出てこられなんとスネアドラムを叩き始めた。「まじか?」と思わず声を出してしまった。
始まりました。
J.シュトラウスⅠ:「ラデツキー行進曲」。

ウィーン学友協会になんてほぼ行けないけれど、メンバーの方が日本に来て同じ演奏をしてくれている、そして自分が手拍子をしている。
なんてハッピーニューイヤーなのだ。

ウィーン・リング・アンサンブルのみなさん、本当にありがとうございます。

32回目のツアーということで、会場のみなさん慣れてらっしゃるのか、合図もなしに全員が揃って手拍子する観客も観客だぁわ。

Kajimotomusic YouTube にかっこよい動画がありました。

クラリネットのメンバーがお1人違う。

   

写真は、パンフレット、チラシより

(2024年1月9日 サントリーホール)

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