フォルクハルト・シュトイデ ヴァイオリン・リサイタル2025 に行ってきた。
曲目は
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番
ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品
スコット・ジョプリン(イツァーク・パールマン編曲):ベセーナ、エンターティナー、イージー・ウィナーズ
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
ラヴェル:ツィガーヌ
フォルクハルト・シュトイデさん
シュトイデさんはウィーンフィル管弦楽団の4人のコンサートマスターのうちのお1人。
旧東ドイツ出身でウィーンには音楽大学卒業後の1994年に移られてもうその年にウィーン国立歌劇場管弦楽団にコンサートマスターとして23歳で入団・就任。
そして4年後の1998年にウィーンフィルハーモニー管弦楽団に入団し2000年からコンサートマスターを務めておられるとのこと。
今の時代のウィーンフィルの申し子的存在だ。
これまでの印象は、強めにがんがんリードするタイプの方。
協奏曲のソリストで聴いたことがあるが、リサイタルは初めてでどんな音を繰り出してこられるのかとっても楽しみにした。
モーツアルト、ドヴォルザーク、ジョプリン、フランク、ラヴェル
バラエティー感満載でシュトイデさんのサービス精神が伝わるうれしいプログラムである。
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第21番
短調モーツアルトで2楽章と短い。
出だしは。
ふんわりだー。わぉ。
木の音がまろやかに鳴って、楽器になんのストレスもかかっていないような雰囲気で短調の暗さを感じない。
広々と響いてなんだか弓が長く見える。
ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品
清い流れだ。
ドヴォルザーク節をイメージしていたが、変に泣きを入れないようだ。
滞りなくあくまで清く流れ続け、ときおり小石にあたって弾けるような変化が入って曲が活き活きして素敵。
スコット・ジョプリン(イツァーク・パールマン編曲):ベセーナ、エンターティナー、イージー・ウィナーズ
ここは、シュトイデさんがジャズ調になって遊ぶに違いないと予想していたが逆。
愉快なメロディーは丁寧に演奏され、リズムや装飾音はウィーン風味が薫った。
ウィンナワルツ的ジョイフルな感じで楽しいー。
ジャズ調に寄せるのではなくウィーンがジョプリンを取り込んだ!
三輪郁さんのピアノも弾んでよかった。
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調
シュトイデさんのヴァイオリンは日本酒でいえば純米大吟醸。
一切の雑味なくクリアで華やか。口あたり優しくて口に含むと芯のある旨味とコクが味わえる。
この純米大吟醸の音を思いっきり響かせると凄みとなる。
フランクのわかりやすいメロディーとこれでもかというラッシュが迫力の爆演であった。
ラヴェル:ツィガーヌ
いったいなんだ!! が終わった感想。
テクニックの宝石箱全カタログという感じで不思議な音がどんどん聴こえてくるのだ。
いったい何人で弾いているのですかという重音奏の美しさ、パリパリパリと両手でするピチカートの明快なイキのよさ、場面が次々と変化していくようなリズム・音質の多様さ。
またこれが「やってます」という力みは一切なくあくまで無駄なくさらさらと流れゆく水流のごとし。
たぶんこれが生涯最高のツィガーヌに違いないと思いながら聴いた。
シュトイデさんはほんとに変幻自在なのだな。
アンコールもやってくれた、2曲も。
ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲。
クライスラー:シンコペーション。
とてもきれいだった。
もう一つわかったのは、シュトイデさんは大柄な方だった。
オーケストラと演奏されているときにはわからなかったが、日本人女性の三輪郁さんと楽譜めくりの方が並ぶとシュトイデさんの胸のあたりくらい。ゆったりゆったりと歩いてらした。
発見であった。
2025年6月23日 東京文化会館小ホール