アンサンブル ウィーン=ベルリン に行ってきた。
曲目は
モーツァルト:セレナード 第12番 K.388(384a)《ナハトムジーク》
セルヴァーンスキ:木管五重奏曲 第1番
ハース:木管五重奏曲 Op.10
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲(木管五重奏版) 第12番 《アメリカ》
始まったその瞬間から。
ケリーさんが絶好調だっ!!
バリバリに伸びて弾けていて、すでに独壇場の予感。
ジェントルマン ジョナサン・ケリーさん
モーツァルト セレナード 第12番 《ナハトムジーク》
ナハトは夜、ムジークは音楽、夜曲ということだそう。
夜ならばしっとりと子守唄なのか、夜中の大パティ―なのか。
本日は後者であった。
バックにあり続けるファゴットのキレよくまろやかな単音の連続に心拍数があがってくる。
ほかの4人がこれに丁々発止と乗ってきて5人揃う時の重厚感そして胎動感がワクワクだ。
まずは温まってきたか!という感じ。
セルヴァーンスキ 木管五重奏曲 第1番
落ち着いたメロディーも軽くはずむように始まる。
徐々にお祭りのよう。お一人お一人が個性でヤンチャに連携しながら奏でている。
ケリーさんはますます音量艶ともに勢いがついている。
シュテファンドールさんのホルンは七変化。細い木管のたたずまいで気配を消す時、全体を優しく包み込む時、金管的鳴りでファファーンっと主張する時とお1人ですごい。
ラブリー シュテファン・ドールさん
フルートは。今回、ちょっとお疲れなのか、カール=ハインツ・シュッツさんが、いつも魅了させてくれる、高い青空を力強く駆け抜けるような爽やかなフルートではなく、若干曇りがちだったのかなと。
それぞれ楽しかったのだが、5人の融合というか合わせたうねりというかがもう少しあってもよかったように感じた。
ハース 木管五重奏曲
ハースは第2次世界大戦中にホロコーストで殺害された作曲家とうことで、心して聴いた。
歌えるメロディーといったような部分がなくとっつきのよくない曲だった。CDだったら素通りしてしまうであろうが、ここはライブ。5人のそれぞれの息遣い、間合いでつくられた世界に入り、睡魔はまったくやってこなかった。
にしても、ファゴットのリヒャルト・ガラーさんとクラリネットのゲラルト・バッヒンガーさんの一心同体的なハーモニーはふんわりと空気を醸成していて、これがウィーンフィルサウンドかと、うっとりした。
ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲(木管五重奏版) 第12番 『アメリカ』
ドヴォルザークはヨーロッパで実力派作曲家として活動しており、交響曲8番を47歳頃に作曲した。
51歳の頃、音楽後進国アメリカに招かれ音楽院の院長に就いた。
翌年、交響曲9番「新世界より」を作曲し、翌月作曲したのが弦楽四重奏曲『アメリカ』だ。グイド・シェーファーが木管五重奏に編曲した版が演奏された。
このアメリカシリーズは似ている。
郷愁と切なさと泣き、しかし垣間見える希望。といった雰囲気だ。
今回は切なさももちろんたたえながら、希望の明るさに沸いているような演奏に聴いた。
出だしは郷愁。ファゴットが甘~く広がる音色につかまれた。
シュッツさんのフルートもここぞと踊っている。
素敵な カール=ハインツ・シュッツさん
この曲はもともと木管五重奏用でしょう、とドヴォルザークに言いたい。
アンコールもやってくれた。しかも2曲!
デリヴェラ:アルボラーダ
R=コルサコフ:熊蜂の飛行
熊蜂の飛行は特別盛り上がった。
熊蜂が”ムンムン”飛び交うところをシュテファン・ドールのホルンが!驚きの音を聴かせてくれた。
微妙に揺れ動きながらの速吹きのリアルな翅音が超人技で、正気ですか!? とホールがどよめくほど。
カーテンコールも何回もこたえてくれ、横一列に並んだ5人はもうかっこよくてしょうがない。
2024年6月6日収録NewCD「Live Ⅱ」発売中。
今回の演奏曲がまるごと入っている。
ドヴォルザーク 弦楽四重奏曲 第12番 『アメリカ』冒頭。ファゴットがしみたところ。
演奏:アマデウス弦楽四重奏団 1959年9月録音
※アイキャッチ写真は株式会社ヒラサ・オフィスウェブサイトより。(C) Tomoko Hidaki
2024年10月3日 所沢市民文化センター ミューズ