トヨタ ウィーン・プレミアム・ コンサート ピアノソロは小菅優、コンサートマスターはフォルクハルト・シュトイデさん

ウィーン・プレミアム・ コンサートに行ってきた。

演奏は「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」。
ウィーンフィル・コンサートマスターのフォルクハルト・シュトイデさんを中心としウィーンフィルのメンバー、ほかで活躍するミュージシャンと合わせて30人ほどの小編成オーケストラ。
トヨタの文化支援活動の一環。

フォルクハルト・シュトイデ

曲目は
モーツァルト セレナード 第13番 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
モーツアルト ピアノ協奏曲 第27番 K.595
ピアノ:小菅 優

=ミニ・ニューイヤーコンサート=
J.シュトラウスⅡ世
 喜歌劇「ジプシー男爵」序曲
J.ランナー
 ワルツ「求婚者たち」 Op.103
ヨーゼフ・シュトラウス
 ポルカ・シュネル「前へ!」 Op.127
J.シュトラウスⅡ世
 ワルツ「千夜一夜物語」 Op.346
ヨーゼフ・シュトラウス
 ポルカ・マズルカ「遠方から」 Op.270
E.シュトラウス
 ポルカ・シュネル「誰と一緒に踊る?」 Op.251
J.シュトラウスⅡ世
 ワルツ「我が家で」 Op.361
 ポルカ・シュネル「インドの舞姫」 Op.351

最初の3音で捕まってしまった「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」

これまで機会あるごとに耳にしてきたあの出だし。
シンプルな3音でもっていかれてしまった。
ふわっと無重力に澄んだ音。
王宮にでも来てしまったかのような貴賓ただよう空気に包まれた。
元気に明るく!スタートする印象をもっていたが、まったく違う。
なるほど、これがシュトイデさんなのか、と。
とにかく繊細で綺麗。
ヴィオラが支えコントラバスが包み込みながらの強弱の表情とアクセントは変化に富み「ああ、アイネクライネってこんな曲なのか」とワクワクした。

指揮者がいない編成で、入りの合図から表情の効かせかたまでシュトイデさんが頭と弓の動きで仕切る。
これが最高にかっこよく、聴きどころでもあり見どころでもある。

この演奏が聴けてほんとうに大人になってよかったと思った。

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「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」ラファエル・クーベリック指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1961年1月5日
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小菅優のモーツアルト ピアノ協奏曲 第27番


モーツアルト ピアノ協奏曲 第27番。
この曲は淡々と弾くタイプのピアニストと劇的に弾くタイプのピアニストがいるように思っていた。
小菅優さんは。後者だった。
もともとのふわっと優しいシフォンケーキのような小菅優サウンドが、ていねいに緩急をつけながらときにターボがかかり、トリルは弾み弛緩するところがない。
“お話”を読み聞かせてもらっているようで引き付けられっぱなしだ。

ヴァイオリンは響きをつや消しするような弓使いでピアノをかたどっていたところもあり技に驚いた。

強いモーツアルトを聴いた。

2楽章は、フルート、オーボエなどのソロがある。
このソロに入る都度都度、小菅さんはソリストに顔を向けて目を合わせて意思のやりとりをしている。
ソロ演奏中は聞きながら並走しているよう。
きれいなメロディーが個性のアクセントで彩られ生き生きとした演奏だった。

指揮者がいないからなのか、通常そうなのかはわからないのだが、なるほど協奏曲というのはこうやって作られているんだなというのがわかった気がした。

オーケストラをバックにピアノのソロを弾いて、ソリストと呼吸を合わせるなんて、どんなに気持ちよいだろうか。
ああ、一度幽体離脱して小菅優さんにのりうつって体験してみたい・・・。

アンコールをやってくれた。
曲は、モーツアルト メヌエット K1。
ピアノ協奏曲 第27番はモーツアルトピアノ協奏曲の最後の曲でありモーツアルト晩年の曲なので、モーツアルトが1番最初、5歳のときに作曲した曲ということだ。
そんなストーリーを考えて披露してくれるのも喜びが増してくる。

小菅優さん男前でした。

J.シュトラウスⅡ世、ヨーゼフ・シュトラウス、E.シュトラウス、J.ランナー のウィンナワルツ。

今回のラインナップは、ただただ楽しいだけでなく、さまざまなタイプの曲調をたっぷり聴けるようになっていた。

ウィーンフィルの秘儀「ズ、チャッチャ」だけでない秘密を目撃した。
各パートがそれぞれの細密なリズムとタイミングで複雑なHzを提供しあっている。
それが微細に溶け合うことによってあの唯一無二の無重力遊泳サウンドが生みだされるのだ。
あの方々はもうウインナワルツなんて居眠りしてても簡単に演奏できるんでしょう? と思っていたがまったくの間違いだった。

ただただ楽しいウインナワルツは、究極の精密細工だった。

強い引力のヴィオラ奏者エルマー・ランダラーさんがかっこよい。

エルマー・ランダラー


釘付けになったのが、ヴィオラ第1奏者エルマー・ランダラーさんだ。

指揮者不在の体制で、シュトイデさんに気を配りシンクロしながら低音部を取り仕切っていて、たいへんかっこよかった。
パンフレットをみるとシュトイデ弦楽四重奏団のメンバーということで、お2人の息がバッチリなのだろう。
シュトイデ弦楽四重奏団を聞いてみたくなった。

アンコールもやってくれた。
ヨーゼフ・シュトラウス:ポルカ『休暇旅行で』。
歌もついて盛り上がる。

ああ、楽しかった。

(2024年3月28日 東京オペラシティ コンサートホール)

アイキャッチ画像はパンフレット、顔写真はトヨタ特設ウェブサイトより

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