定番エピソード
ベートーベン交響曲第3番『英雄』には定番のエピソードがあります。
ところがすぐに『ボナパルト』は没になり『英雄』のタイトルに変更された。
その理由はベートーベンの弟子のフェルディナント・リースが語っていて、内容は次のとおり。
しかし、ナポレオンが皇帝の座に就いたことを知り、ベートーベンは激怒し「ナポレオンも他のヤツと同じ暴君になるだろう」と叫んだ。
そして表紙を破り捨て、新しく書きタイトルを「エロイカ」(eroica イタリア語で英雄)とした。
表紙は破られていない
話題の表紙画像が↓です。

オリジナルは確認できませんが、作者校閲済みの清書の楽譜でウィーン楽友協会に所蔵されているもので、文字が削られた跡がみえます。
元の和訳は小松雄一郎編訳新編『ベートーヴェンの手紙』(岩波文庫)によると次のように書かれているそうです。
9月26日
題 ボナパルト (IntitolataBonaparte:イタリア語)
1804年8月
ルイ・ヴァン・ベートーベン氏作曲
ボナパルトのために作曲 (Geschriben auf Bonaparte:ドイツ語)
交響曲第3 作品55
表紙は破られていませんが、『ベートーヴェンの手紙』、wikipediaによると次のことがわかっています。
・題 ボナパルト が強く消されている
・「ボナパルトのために作曲」は元は鉛筆で書かれ、あとからなぞられている。
・「1804年8月」と「交響曲第3」はベートーベンの筆跡ではない
『ボナパルト』から『英雄』に変更されたのは間違いない
表紙とは別に、出版社ブライトコップ・&・ヘルテル社へ出した手紙でも「この交響曲は本来ボナパルトと題されるもの」と書かれています。
また別の出版社ジムロックにも「この曲はボナパルトに捧げられています」と書いています。
ですので、当初はナポレオン・ボナパルトに向けて作られたのは間違いありません。
ですが、なぜ、変更されたのかははっきりしていないのです。
表紙が破られていない時点で、弟子のフェルディナント・リースの「ベートーベン、ナポレオンに激怒」話はちょっと盛っている可能性があります。
なぜ変更されたかについての謎を ↓ で解き明かします。
「ボナパルト」から「エロイカ(英雄)」へ ベートーベン交響曲第3番『英雄』は当初はナポレオンに捧げることを念頭に表題を「ボナパルト」としていたが、のちに『英雄』に変更されたことについて、↓の記事で説明しました。 ではなぜ、書き換えられたのか、について真相を探ります。 ベートーベンの...
