寺神戸亮&川口成彦 デュオ・リサイタル

寺神戸亮&川口成彦 デュオ・リサイタルに行ってきた。

曲目は
ベートーヴェン:モーツァルトの《フィガロの結婚》から「もし伯爵様が踊るのなら」の主題による12の変奏曲
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第4番
ベートーヴェン:ロンド 第2番(ピアノソロ)
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番「春」

古楽器ヴァイオリンの名手 寺神戸亮(てらかど りょう)さんと、フォルテピアノの貴公子 川口成彦(かわぐち なるひこ)さんのデュオコンサート。
春のベートーヴェンシリーズだ。

ベートーヴェン モーツァルトの《フィガロの結婚》から「もし伯爵様が踊るのなら」の主題による12の変奏曲

ベートーヴェンがモーツアルトの曲を変奏曲にしたとは、なんて夢のコラボ曲なのでしょう。

冒頭、ヴァイオリンのピチカートで始まった。
強い弦の音だ。

古楽器ヴァイオリンの音は、ごっつい。
カラオケでかけていたエコーを消して生歌にしたときのような、剥き出し、そのものの音という感じ。

モーツアルト、しかもフィガロの結婚はコメディーっぽく軽やかな曲と思っていたが、寺神戸さんの演奏では一音一音しっかりと押さえた感じで、響きは太く分厚い。
当時、モーツアルト、ベートーヴェンはこの音を前提に作曲したのだな、と思うと感慨深く心して聴いた。
届いてくる響きに身を委ねるといよりは、自分から聴きにいく姿勢に自然となった。

ベートーヴェン ヴァイオリン・ソナタ 第4番、5番

この2曲が一度に聴ける贅沢な構成。

寺神戸さんのヴァイオリンは太く分厚いだけではない。
滑らかに切り替わり、艶がまたとっぷりだ。
通常のヴァイオリンの3倍くらいの濃さではないだろうか。
5番は、熱かった!
堅く太くそしてエレガント。
木が鳴るとはこういうことなのか?と体感した感じ。
美しいメロディーを堅牢に響かせ、音量も大きく大迫力だ。
ともすれば一本調子ともとれるほどの力強さ、これを川口さんのフォルテピアノがみごとに飾っている。
軽やかにきめ細かく強弱、アクセント、音色で豊かに表情がつけられた演奏で、相乗的に活き活きしてくるのだ。

春の初めに、とてもよい音楽が聴けた。

ベートーヴェン:ロンド 第2番

フォルテピアノは小さい。ペダルがない。

ポロンポロンと天使が遊んでいるかのような指使いで澄んだかわいい音があふれ出てくる。
もう、「好きーー」となる。


寺神戸さんはベルギーのブリュッセル在住とのこと。
モーツアルトなどのオペラを中心に指揮者としてご活躍で、日本で最もバロック・オペラに精通していらっしゃるということ。すごい。

川口さんはスペイン音楽がお好きでCD『ゴヤの生きたスペインより』をリリースされているとのこと。


モーツァルトの《フィガロの結婚》から「もし伯爵様が踊るのなら」の主題による12の変奏曲(演奏者は異なる)。

※アイキャッチ写真は武蔵野文化会館ウェブサイトより

2025年3月2日 武蔵野市民文化会館小ホール

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