1993年生まれの松本宗利音(まつもと しゅうりひと)指揮、2003年生まれ(!)の谷昴登(たに あきと)ピアノのフレッシュコンビと読響の共演です。
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲
■ラフマニノフ
ピアノ協奏曲第2番
■ドヴォルザーク
交響曲第9番「新世界より」
モーツアルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』序曲
松本さん、「宗利音」は世界的指揮者のカール・シューリヒトの夫人とのつながりによるそうで、どんだけもったいつけた人なのかと注目していましたところ、舞台袖から登場したのは気負い過ぎるでもなくスカしているようでもなく、自然体で場所が違えば書店員さんのようなあっさりとした雰囲気でなかなかなじみやすい感じの青年です。
礼儀正しく指揮台に上り、始まりました。
おお、わかりやすい指揮だ。
ブロムシュテットばりの”手刀”タクトで、パートパートに指示を伝えています。
「ヴァイオリンを強く」「金管はもっともっとーー」「流れるように」など素直で柔らかな動きです。
演奏も、若者の意を再現しようではないかと協力的に応じているのが感じられます。
最初のインパクトを息をのんで待ちました。
う~ん。「その音」が揃っていないようなちょっとバラバラしたように思いました。
前半のこわ~~い こわ~~いところが楽しみでしたが、不気味さは抑え気味です。
かわりといってはなんですが、「陽」のところはテンポよし流れよしでとっても心地よかったです。
「いいぞ! しゅーりひと」
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番といえば、そうです。
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2014年冬季オリンピック・ソチ大会。フィギュアスケート女子金メダルの本命浅田真央選手は初日のショートプログラムで大コケ、まさかの16位という絶望的な順位についてしまった。日本中、いや世界中がショックに包まれ棄権さえ囁かれながらも真央ちゃんは二日目フリーに登場したのです。
その時の曲が「ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番」。
ジャンプを次々と決めスピンも完璧、軽快なステップで氷上を舞い、本来の浅田真央を見せつけてくれたのです。
途中、少し手をついた場面もあったにもかかわらず減点は「0」、最終順位を6位に上げたのでした。
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というわけで、先入観もありながら最初の1音「鐘」の音に耳をすましました。
静かに、徐々に力強い「鐘」です。
一点の曇りもない澄んだピアノです。
強いところは強く。
時に、ジャズっぽくさえ聴こえる”立った”指運びが新鮮。
真央ちゃんがノリにのってリンクを広々とステップ、スパイラルで回るところは、キレのある大音量でサービス満点、コントラバスも合わせてがんがん響き盛り上げてとってもよいです。
1楽章最後の「ジャン ジャジャジャン」で拍手したくなるほど入りこめました。
2楽章はピアノをただただ聴く。
白鍵盤は白い、黒鍵盤は黒い音がしているメリハリのきいた清い音で飽きがきません。
3楽章はそれだけにヴァイオリン、ビオラがもう少し泣いてくれてもよかったかな。
最後は裏切らない盛り上がりで、ブラボーでした。
管弦楽との融合は単調だったようにも感じましたが、陰鬱さのないラフマニノフは発見でした。
「行け! 昴登」
演奏はバーンスタイン指揮 (P)フィリップ・アントルモン ニューヨークフィル
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」
1,2,3,4楽章とも複数さびのある「交響曲の幕の内弁当」的なうれしい曲です。
ピアニシモはもっとピアニシモに。ここはメロディーを聴かせて。
と”こうなって欲しい”ところを期待たがわずやってくれました。
宗利音シェフ、胸を張って譜面も見ずにのびやかに音をつないでいます。
2楽章のフルート、イングリッシュホルンのソロはともにわりと淡泊でした。
この曲はチェロを聴きたいわけですが、目立つところは目立ちながら心地よかったです。
4楽章の出だしは満を持してという感じ。
コントラバスが効いてます。
音に厚みがありオーケストラの一体感が伝わりました。トロンボーンは全体キマってました。
あと、パートごとに渡していくところはシームレスにやってもらえるとよいのだがと思いました。
今回はティンパニーもよい音でした。
演奏はカラヤン指揮 ベルリンフィルハーモニー管弦楽団
お一人お一人が伸び伸びされていて、フレッシュな指揮者との相性はとってもよかったのではないでしょうか。
お正月向け?の盛り上がる豪華3曲のハッピープログラムでございました。
東京は新型コロナウイルス感染症まん延防止等重点措置の期間で、このコンサートも中止ではないかとウェブサイトで確認したりしましたが、開催となりよかったです。
座席は一人置きで観客からすると余裕があって楽でしたが、喜んでいいやらという感じでした。
(2022年1月23日 武蔵野市民文化会館)